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新型インフルエンザ 診療ガイドライン(第1版)

新型インフルエンザ 診療ガイドライン(第1版)

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内容
  I.基本的な考え方
 II.新型インフルエンザ感染症
 III.診断
 IV.検査
  V.治療
 VI.抗インフルエンザ薬の予防投与
 VII.予防および準備対応
VIII.感染対策

I.基本的な考え方

 現在流行している新型インフルエンザは、ブタ由来インフルエンザA(H1N1)による感染症である。2009年4月にメキシコにおける発生が確認され、以降、全世界に伝播し、多数の入院、死亡例が報告されている。現在、我が国における新型インフルエンザ患者は、若年者を中心とし、多くは入院加療を要さず、ノイラミニダーゼ阻害薬の投与を行いながら外来治療を行っている1)。しかし、海外では基礎疾患を有する者および健常者において、ウイルス性肺炎、さらにはARDS(acute respiratory distress syndrome)併発例など重症化することが知られ2)、我が国でも8月以降、入院例が増加し、死亡例も報告されている。
 欧州疾病予防センター(ECDC)では、これから起きる本格的なブタ由来新型インフルエンザ流行、第1波で(今までのブタ由来インフルエンザの流行は前駆波とし、これから第1波が起きると考えられている)、国民の20〜30%が罹患発病し、その1〜2%が入院、さらに0.1〜0.2%が死亡すると予測している3)。日本が諸外国と同様であるとすると、2560〜3840万人が発病し、入院が25〜77万人、死亡が2.5〜7.7万人となる。
 数年後には、全国民が罹患するのが新型インフルエンザの本質であり、第1波での2千万から4千万人の患者発生を避けることは出来ない。これからは、原則として、すべての病院と診療所がインフルエンザ患者の診療にあたることが新型インフルエンザ対策の要諦であり、ノイラミニダーゼ阻害薬の投与により、重症化を防ぎ入院や死亡を減らすことが最大の目標となる。
 さらに、過去のパンデミックでは、細菌性肺炎を合併することにより、不幸な転帰をとることが多くみられたが4)、ブタ由来新型インフルエンザの重症例においても細菌感染症の合併が報告されている。我が国のような高齢化社会においては、基礎疾患を有する高齢者も多く、適切な抗菌化学療法を行う必要がある。

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II.新型インフルエンザ感染症

 新型インフルエンザは季節性インフルエンザと同様に、飛沫感染が感染経路と考えられ、潜伏期は1〜7日(中央値3〜4日)である5)。米国ニューヨーク市における入院909例の報告では、喘息等の呼吸器疾患が41%、糖尿病が13%、心疾患が12%など基礎疾患を有する患者が大半を占めたが、健常成人や小児など特にリスクのない入院も21%みられた2)。最近では、健常者が重症化する例が増加している。性差は特にない。
 定型的には急性に発症する発熱に始まり、呼吸器症状(鼻汁もしくは鼻閉、咽頭痛、咳嗽など)を認め、通常インフルエンザには少ない下痢や嘔吐もみられることがあるという1,2)。基本的には、症状からは、季節性インフルエンザと区別はできないと考えられる。
 新型インフルエンザ患者診察上での重要な注意点は、50歳以下の健常成人や小児で、発病当初は、軽症であっても、第5〜6病日からウイルス性肺炎を併発して急激に重症化することがある。その場合、多くはICUでの治療が必要となる。重症例の40%はこのような健常者の症例であり、基礎疾患の有無で重症化の予測をすることは困難なこともある。

表1・2

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III.診断

 上述の臨床症状および地域のサーベイランスによる流行状況を参考に、家族や学校、職場の罹患状況、接触歴などを考慮し、新型インフルエンザを疑う。診断は臨床診断に加えて、迅速診断を行うことが望ましい。

1.インフルエンザ患者と非インフルエンザ患者との分離
 感染対策上、新型インフルエンザの感染が疑われる発熱患者と、他患者との分離を可能な限り行う。新型インフルエンザの感染が疑われる患者にはサージカルマスクを着用させ、対応する医療従事者もサージカルマスクを着用する6)。窓を定期的に解放することや、窓の開放が困難な場合はエアコンを用いるなど、戸外との換気の良好な部屋で対応するとともに、待合室は他の患者と別室を用いるか、困難な場合には、他の患者との距離を1m以上離したり、衝立やカーテンの活用を考慮する。
 実際には新型インフルエンザの伝播経路は市中が主であることに加えて、医療機関は、日常的にみられるインフルエンザ以外の発熱性疾患に対しても、確実な診療が求められるため、他患者との分離は、診療上のバランスを考慮して行う必要がある。

2.重症の新型インフルエンザ患者のトリアージ
 新型インフルエンザの診療においては、患者の多くは軽症であるものの、時にみられる重症例に対して適切な医療を提供する必要があることから、重症度の適切な判断による重症者のトリアージが必要である。重症化リスク群*を含めて軽症例では外来治療ならびに自宅療養が原則である。
 *重症化リスク群:慢性肺疾患(喘息を含む)、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液疾患、神経疾患、神経筋疾患または代謝異常(糖尿病を含む)、5歳以下の小児、高齢者、妊婦および、新型インフルエンザにおける臨床疫学研究に基づいたハイリスク患者。
 重症度の判断による入院の適応は、罹患患者が有する基礎疾患によるものの、原則的に主治医の裁量による。一般的には、肺炎・気道感染による呼吸状態の悪化、心不全の併発、その他の臓器障害、著しい脱水などにより全身管理が必要とされた場合、入院治療を行う。したがって、診察時には、頻脈、頻呼吸、血圧低下、努力性呼吸、チアノーゼなどの基本的な臨床症状に加えて測定可能であればSpO2を測定し、これらの異常が認められる場合には、特に重症化リスク群について、血液・生化学検査や、胸部レントゲン写真などの画像所見の評価を含め、慎重に診療する必要がある。従来のパンデミックインフルエンザでは、細菌性肺炎による重症化が多く報告されており4)、新型インフルエンザに合併する二次性の細菌性肺炎について適切に評価することが必要である。日本呼吸器病学会では、市中肺炎の重症度および入院について以下のような基準を示している7)

表3

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IV.検査

1.インフルエンザ迅速抗原検査
 迅速抗原検査はPCR法と比較して感度が低いものの、安価かつ迅速であり、季節性インフルエンザの診療と同様に、新型インフルエンザの診療においても活用することが可能と考えられる。
(1)検査対象:インフルエンザ様症状の患者。特に、重症患者、重症化リスク群、集団感染が疑われる事例では積極的に検査する。
(2)結果の解釈:迅速抗原検査では、季節性インフルエンザの場合、感度80〜90%とされる。新型インフルエンザでは、季節性インフルエンザの場合より感度は低い可能性があるものの、補助診断として十分活用しうることが報告されている1,8)。発症早期では感度が低く、発症後24時間位が最も感度が高いとされ、検体採取のタイミングによって、結果を解釈する必要がある。今回の新型インフルエンザでは、特に早期の治療開始が重要視されているので、臨床的に新型インフルエンザが疑われる場合は、迅速診断が陰性であっても治療を開始すべきであり、診断確定のためにノイラミニダーゼ阻害薬の投与開始が遅れないようにすべきである9)

2.RT-PCR検査
 現在の迅速抗原検査はA型もしくはB型の診断にのみ用いられることから、季節性インフルエンザと新型インフルエンザの鑑別を行うためには、RT-PCRや培養検査などの確定検査を行う必要がある。現在のところ、新型インフルエンザの確定検査は、国の新型インフルエンザに対する指針によって、保健所の指示のもと、地方衛生研究所などで行う検査である。確定検査の臨床的な意義および人的・物的リソースを考慮し、すべての新型インフルエンザ疑い患者において行う必要はないものの、新型インフルエンザの診断に必要不可欠な地域サーベイランスによる流行状況の把握および、学校、社会福祉施設、医療施設等における集団感染が疑われる事例、また、新型インフルエンザ感染が疑われる患者が重症化した場合などについて施行する必要があるとともに、地域における新型インフルエンザウイルスの薬剤感受性の動向を調査する際に行われる。
 現在、新型インフルエンザは四種病原体に指定されており、適切なバイオセーフティーを行いつつ、ポジティブコントロールの供給体制の整備が行われれば、今後プライマーの確保のもと、既出のプロトコールを参考に10)、大学病院などの基幹病院等で検査を行うことも可能である。

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V.治療

1.一般的治療
 総合感冒薬や解熱薬、鎮咳薬などについて臨床症状を評価し適時投与する。インフルエンザによる持続性の発熱などにより、高齢者、小児などの対応力が限られる患者では脱水がみられることが多く、慢性心不全患者、慢性腎不全患者などの循環動態が不安定な患者では、その後の基礎疾患の増悪のリスクがみられることが多いため、十分な経口・経静脈補液を含めて適切な対応を行う。また、漢方薬による診療に習熟した医師のもとでは、一部の麻黄湯などの漢方薬を投与することも可能である。
 なお、小児ではインフルエンザ脳症のリスクを考慮し11)、アセチルサリチル酸、ジクロフェナク(ボルタレン等)、メフェナム酸(ポンタール等)の投与は避ける。

2.抗インフルエンザ薬
 抗インフルエンザ薬の投与の適応は、原則的に各々の医師の裁量で行われる。新型インフルエンザに対して、oseltamivirとzanamivirは有効であるが、amantadineには耐性である。マウス、フェレット、サルなど動物の感染実験では、新型インフルエンザは、季節性インフルエンザに比べて、明らかに下気道での増殖が強く、肺炎を起こす可能性が高いことが示されている12)。メキシコでの流行時、致死率が当初は高く、基礎疾患のない青壮年での死亡が目立った。感染が確認された18例の肺炎症例は、全例、oseltamivirの投与を入院まで受けず、入院後投与が開始されたのは発病8日目であった13)。最近、発表された米国ミシガンにおける死亡例の報告でも、oseltamivirの投与開始はメキシコ同様、発病8日目であった14)
 Oseltamivirの投与の有無、あるいは開始の時期が、新型インフルエンザでのウイルス肺炎の合併に関係していると考えられる。またWHO治療ガイドライン上で、oseltamivirの投与により、肺炎のリスクが有意に減少し、入院の必要性が減ると述べられている10)。今回の新型インフルエンザの流行に際して、ノイラミニダーゼ阻害薬の役割は、季節性インフルエンザで周知されている発熱期間の短縮ではなく、重症化や死亡を防止することにある。
 日本で確立している迅速診断を実施し、早期にノイラミニダーゼ阻害薬で治療するというインフルエンザ診療を徹底して実施することが目指すべき新型インフルエンザ対策となる。健康成人、小児の重症化が問題となっているので、ハイリスク患者のみならず、すべての新型インフルエンザ患者に対して、ノイラミニダーゼ阻害薬の治療が必要である。従来、ノイラミニダーゼ阻害薬の投与が避けられてきた妊婦、また新生児を含む1歳未満の乳児の治療もWHOのガイドラインでは勧奨している。日本では、投与にあたってインフォームド・コンセントに留意しなくてはならない。WHOのガイドラインでは、呼吸困難を訴える患者、肺炎患者、脳症患者等を重症として、重症患者は全例をoseltamivirで治療することが勧奨されている。重症感染症の治療薬として、zanamivirではなく、oseltamivirが第1選択となっているのは、oseltamivirでは重症例の治療実績があることや、米国における重症化の原因として喘息が最も多く、吸入薬であるzanamivirの気道刺激性の可能性のためである。日本でも、妊婦15)や10代を含め重症例やzanamivirが不足した場合では、インフォームド・コンセントに留意しoseltamivirによる治療が必要となる。

表4

3.新型インフルエンザによる脳症
 これから起きる第1波では、非常に多くの小児、おそらく、小児の30〜40%が発病すると考えられる。脳症はインフルエンザに感染した小児に一定の割合で発症するので、結果として小児では脳症が多発する可能性が高い。また脳症は、インフルエンザに初感染である1〜3歳の低年齢層に好発するが、今回は新型インフルエンザであり全年齢層で免疫がないので、小中学生や稀には成人でも、脳症を発症する危険性がある。
 実際には痙攣、意識障害、異常言動が見られた場合は、脳症に十分に注意が必要である。小児の脳症は、発症が早期で、状態の悪化が早い例が多く、oseltamivirの早期投与でも防ぐことが困難な例が多い。脳症では、早期入院による集中治療が必要となる。具体的な治療法などは、脳症のガイドラインを参照のこと16)。今年の第1波ではパンデミックワクチンの接種は間に合わない可能性が高いが、来年の第2波ではワクチンを幼児、学童に広く接種する必要がある。

4.耐性について
 Oseltamivir耐性の新型インフルエンザも少数ながら報告されている17)。OseltamivirでA型インフルエンザ患者を治療すると、治療開始後数日で、小児では5〜10%程度に、成人では1%以下に耐性ウイルスが出現する。しかしながら、出現した耐性ウイルスは、周囲に感染を起こすことはなく、2〜3日で上気道から消滅する。また、耐性ウイルスが出現した患者の症状が重症化することはない。したがって、新型インフルエンザによる重症化のリスクを考えれば、oseltamivir治療の必要性の方が遙かに重要である。耐性ウイルスのサーベイランスは必要であるが、耐性の問題は、積極的なoseltamivirの投与を妨げるものではない。なお、昨シーズンに耐性のソ連かぜウイルスが世界的に流行した原因は、oseltamivirの治療により出現したものとは考えられず、自然変異により出現したもの、自然耐性(natural resistance)と考えられている。

5.二次性の細菌性感染症に対する治療
 インフルエンザ罹患後には、持続的な発熱による脱水に基づく予備能の低下や、免疫能の変化18)などから、時に二次性の細菌性感染症の合併がみられる。実際に従来のパンデミックインフルエンザでは、死亡例の多くが細菌性感染症によると言われている4)。季節性インフルエンザ罹患後における細菌性感染症の原因菌としては、肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、モラクセラ・カタラーリスなどがみられ、新型インフルエンザ罹患後における肺炎球菌感染症もみられるとされる。日本感染症学会や日本呼吸器学会などの肺炎に関するガイドラインを参考に、適切な抗菌化学療法を行うことが重要であると考えられる。

6.重症者に対する治療
 新型インフルエンザの合併により、呼吸状態ならびに循環動態の悪化がみられる場合は、標準予防策および飛沫予防策を遵守し、適切な基礎疾患の増悪への対応、人工呼吸器管理などを含む全身管理を行う。インフルエンザは飛沫感染が主な病原体であり飛沫予防策が適応されることから、必要な医療体制を確保すること併せて、新型インフルエンザに対しては、陰圧個室への隔離を含めた空気感染対策を行う必要性はほとんどないと考えられる。現在のところ、新型インフルエンザによる重症呼吸器不全におけるステロイド薬の有効性については不明である。

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VI.抗インフルエンザ薬の予防投与

 新型インフルエンザ流行下、感染した場合に合併症のリスクが高いハイリスクグループおよび、医療従事者には曝露後予防を考慮する。季節性インフルエンザの場合、抗インフルエンザ薬による発症予防効果は約70〜80%以上はみられるとされ19)、現在のところ、新型インフルエンザ曝露時における抗インフルエンザ薬の予防投与の効果は不明であるものの、一定の効果が期待される。新型インフルエンザ感染症患者に、2m以内の近接した環境に、一定時間以上(すれ違っただけなどは除外)接触するなどの濃厚接触した場合、予防投与を検討する。
具体的には、以下の(1)から(3)に当てはまる群(場合)が濃厚接触した際に予防投与を考慮する。
(1)新型インフルエンザ感染症により重篤化するリスク群
(2)医療従事者が、適切な個人防護具を着用せずに曝露した場合。
(3)集団感染事例した場合のリスクが高い群(医療施設の入院患者、社会福祉施設の入所者など)が、新型インフルエンザ患者と同室していた場合、同室者のリスクに応じて積極的に投与を検討する。

表5

 対象者が新型インフルエンザ患者の発症24時間以上前に濃厚接触した場合および、すでに濃厚接触後7日間を経過している場合には予防投与は不要である。対象(1)の家族が曝露した場合において、家族の一律的な予防投与は推奨しない。

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VII.予防および準備対応

1.季節性インフルエンザワクチン接種
 今後の季節性インフルエンザの流行は不明であるものの、例年、多数の超過死亡がみられる重要な疾患である。季節性インフルエンザと新型インフルエンザが重複した流行下では、対応がさらに困難となることが危惧される。季節性インフルエンザワクチンはその有効性が確認されていることから20)、可能な限り多くの人に接種する必要がある。
 A型インフルエンザは、今後、ほとんどがブタ由来新型インフルエンザとなり、Aソ連型や香港型はヒトの世界から消滅する可能性もあるが、B型インフルエンザは流行が続くので、少なくとも、B型予防には季節性インフルエンザの接種は有効である。

2.新型インフルエンザA(H1N1)ワクチン
 有効性および安全性を確認する必要があるものの、新型インフルエンザ対策の最も重要な対策の一つである。今後上市された場合は、供給に限りがあるため、国の指針や優先順位を参考に接種する。

3.肺炎球菌ワクチン
 従来のパンデミックインフルエンザにおいては、死亡例の多くがインフルエンザ罹患後の細菌性肺炎であるとされる。新型インフルエンザ対策においては重症化防止が最も重要であることから、市中肺炎の最も多い原因菌であって重症化しやすい肺炎球菌感染症に対する対応が必要である。
 現在上市されている23価の肺炎球菌ワクチンは、安全に接種することが可能であり、侵襲性の肺炎球菌感染症に対する予防効果があるとともに21)、インフルエンザワクチンと併せて接種することにより更なる効果も期待できるため22)、諸外国ではインフルエンザワクチンとの同時接種が推奨されるとともに23)、その際においても有効性や安全性も高いことが報告されている24)
 可能な限り多くの人に接種する必要があるものの、供給に限りがあるため、以下の優先順位を参考に接種する。
(1)脾摘患者
(2)季節性および新型インフルエンザ感染症により重篤化するリスクを有する高齢者
(3)高齢者

4.抗微生物薬、必要資材の備蓄
 新型インフルエンザは、高い感染率および重症例の発生が懸念されていることから、パンデミック期においては、診療上必要不可欠な医療資源について、十分な確保が必要である。特に現在、地域や医療施設において、医療材料および薬剤の厳しい在庫管理が行われているため、パンデミック期における急激な需要増加に対応することを考慮する必要がある。
 新型インフルエンザの治療において最も重要な、抗インフルエンザ薬の備蓄および円滑な供給体制を整備する必要があるとともに、合併症治療に用いられる抗菌薬について、十分量の在庫の確保を行うことが必要である。

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VIII.感染対策

 インフルエンザは飛沫感染で伝播することが主な病原体であり25)、特に近接した場所で一定時間接触する場合に伝播することが多く、家庭内や学校などで伝播することが知られている25)。医療施設においても呼吸器衛生/咳エチケットを含め、手指衛生および標準予防策および飛沫予防策を行う必要がある。以下に医療施設における感染対策を示す。
(1)手指衛生、標準予防策および飛沫予防策の遵守
(2)適切な個人防護具の着用*
(3)医療施設における適切なトリアージ(罹患患者とその他の患者との分離、重症度の判断)
(4)換気状況も含めた施設環境(外来・病棟・職員エリア)の整備
(5)季節性および新型インフルエンザワクチンの接種
(6)職員の健康管理、職員家族を含めた罹患時の対応
 周囲への感染性を有する期間については、発症後7日間もしくは解熱後2日については、周囲に対する感染性を有するとして就業の制限を考慮する。加えて、新型インフルエンザにおいては、ウイルスの排泄期間が長引く可能性も考慮し、出勤後も、手指衛生の励行やマスクを着用するなど、周囲への伝播を抑えるように努力することも考慮される。

表6

図1

図2

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文献
1)大阪府、神戸市における新型インフルエンザの臨床像(第2報)
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/2009/06/0612-01.html
2)CDC. Hospitalized patients with novel influenza A (H1N1) virus infection. California, April-May 2009. MMWR. 2009; 58(19): 536-41.
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5819a6.htm
3)ECDC INTERIM RISK ASSESSMENT, Pandemic (H1N1) 2009 influenza, 21 August 2009,
http://www.ecdc.europa.eu/en/healthtopics/Documents/
0908_Influenza_AH1N1_Risk_Assessment.pdf

4)Morens DM, Taubenberger JK, Fauci AS. Predominant role of bacterial pneumonia as a cause of death in pandemic influenza: implications for pandemic influenza preparedness. J Infect Dis. 2008 Oct 1;198(7):962-70.
5)WHO. Considerations for assessing the severity of an influenza Pandemic.29 May 2009.
http://www.who.int/wer/2009/wer8422.pdf
6)WHO. Infection prevention and control in health care in providing care for confirmed or suspected A (H1N1) swine influenza patients, Interim guidance, 29 April 2009
7)日本呼吸器学会「呼吸器感染症に関するガイドライン」成人市中肺炎診療ガイドライン, 2008.
8)山本 剛、大寺 博、熊木まゆ子、松原康策、仁紙宏之、高蓋寿朗:西神戸医療センタでの新型インフルエンザの報告.日本感染症学会.
http://www.kansensho.or.jp/topics/pdf/090522nishikoube_report.pdf
9)WHO, Recommended use of antivirals, Pandemic (H1N1) 2009 briefing note 8,
http://www.who.int/csr/disease/swineflu/notes/h1n1_use_antivirals_20090820/
en/index.html

10)WHO: CDC protocol of realtime RTPCR influenza A (H1N1) ,revision 1,28 April 2009.
11)Mizuguchi M, Yamanouchi H, Ichiyama T, Shiomi M. Acute encephalopathy associated with influenza and other viral infections. Acta Neurol Scand Suppl. 2007;186:45-56.
12)Ito Y, Shinya K, Kiso M, Watanabe T Sakoda Y Hatta M et al. In vitro and in vivo characterization of new swine-origin H1N1 influenza viruses. Nature. 2009;460:1021-5
13)Perez-Padilla R, de la Rosa-Zamboni D, Ponce de Leon S, Hernandez M, Quinones-Falconi F, Bautista E, et al. Pneumonia and Respiratory Failure from Swine-Origin Influenza A (H1N1) in Mexico. N Engl J Med. 2009 ; 361(7):680-9
14)CDC. Intensive-care patients with severe novel influenza A (H1N1) virus infection - Michigan, June 2009. MMWR. 2009;58(27):749-52.
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5827a4.htm
15)日本産婦人科学会.妊婦もしくは褥婦に対しての新型インフルエンザA(H1N1)に対する対応Q and A(一般の方対象)
http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_20090825a.html
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/02-03-01.pdf
16)厚生労働省 インフルエンザ脳症研究班,インフルエンザ脳症ガイドライン
http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/051121Guide.pdf
17)厚生労働省.大阪府におけるオセルタミビル(商品名:タミフル)耐性を示す遺伝子変異が検出された新型インフルエンザウイルスについて
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/houdou/2009/07/dl/infuh0702-03.pdf
18)Sun K, Metzger DW. Inhibition of pulmonary antibacterial defense by interferon-gamma during recovery from influenza infection. Nat Med. 2008 May;14(5):558-64.
19)Jefferson T, Demicheli V, Rivetti D, Jones M, Di Pietrantonj C, Rivetti A. Antivirals for influenza in healthy adults: systematic review. Lancet. 2006 Jan 28;367(9507):303-13.
20)Wilde JA, McMillan JA, Serwint J, Butta J, O'Riordan MA, Steinhoff MC. Effectiveness of influenza vaccine in health care professionals: a randomized trial. JAMA 1999; 281(10):908-13.
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22)Honkanen PO; Keistinen T; Kivela SL. Reactions following administration of influenza vaccine alone or with pneumococcal vaccine to the elderly. Arch Intern Med 1996 Jan 22;156(2):205-8.
23)CDC, General Recommendations on Immunization Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP). MMWR. 2006; 55(RR15)1-48
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/rr5515a1.htm
24)Carlson AJ, Davidson WL, McLean AA, Vella PP, Weibel RE, Woodhour AF et al, Pneumococcal vaccine: dose, revaccination, and coadministration with influenza vaccine. Proc Soc Exp Biol Med. 1979 Sep;161(4):558-63.
25)CDC. Guideline for Isolation Precautions: Preventing Transmission of Infectious Agents in Healthcare Settings 2007.
http://www.cdc.gov/ncidod/dhqp/gl_isolation.html

平成21年9月15日

社団法人日本感染症学会・新型インフルエンザ対策委員会・診療ガイドラインワーキンググループ

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