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65歳以上の成人に対する
肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方
(第2版 2017-10-23)

65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第2版 2017-10-23)

65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(平成27〜30年度の接種)

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<内容>
1)はじめに
2)合同委員会の見解
3)PPSV23の定期接種について
4)成人におけるPCV13の位置づけ
5)PCV13-PPSV23連続接種の考え方(資料1参照)
6)PPSV23とPCV13の併用接種時の接種間隔に関する原則的な考え方
7)定期接種開始後の肺炎球菌ワクチン接種の具体的考え方
8)おわりに
資料1.海外及び国内論文データ
資料2.米国ACIPの推奨
参考文献
更新履歴

1)はじめに

 2014年10月1日より23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)の65歳以上の成人を対象とした予防接種法に基づく定期接種が開始された。一方、2014年6月に13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)が、65歳以上の成人に適応拡大されたことから、PCV13を同対象年齢に対して任意接種ワクチンとして接種することが可能となっている。このため、実地臨床医家にとって2種類の肺炎球菌ワクチンをどのように使い分けるか、併用する場合には適切な投与間隔はどのように考えるべきかの判断が必要となっている。このような成人の肺炎球菌ワクチンを取り巻く背景から、日本呼吸器学会ワクチン検討WG委員会及び日本感染症学会ワクチン委員会はその合同委員会を組織し、現時点での「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方(以下、「考え方」とする)を実地臨床医家に対しどのように周知すべきかについて検討してきた。本委員会は第1版の「考え方」を発出した2015年1月から2年9か月が経過したことから、「考え方」の見直しを行い、この第2版の「考え方」における見解を示すこととした。

2)合同委員会の見解

1.第1版の「考え方」における見解(2015年1月)
 65歳以上の成人に対するPCV13の免疫原性、安全性に関する国内・国外のデータは認められるが1-4)、臨床効果の成績はオランダにおける一報のみである5)。また、その費用対効果の解析も未実施である。このため、合同委員会としては、現時点では65歳以上の成人におけるPCV13を含む肺炎球菌ワクチンのエビデンスに基づく指針を提示することは困難と判断した。また、2014年9月に米国Advisory Committee on Immunization Practices; ACIP)は成人の肺炎球菌ワクチンの65歳以上の成人に対する推奨について発表したが6)。尚、このPCV13の定期接種については2018年に再評価するとされている。一方、PCV13を定期接種とした根拠となった米国における65歳以上の成人に対するPCV13の臨床効果、費用対効果の推定については、米国における65歳以上の成人における侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)、肺炎球菌性肺炎の罹患率、原因血清型の分布等が利用されたと考えられる。しかしながら、わが国の成人におけるPCV13の背景は、小児におけるPCV7/PCV13の導入時期の違い等から、米国における背景とは異なると考えられる。このため、2015年1月の時点で合同委員会はわが国の肺炎球菌ワクチンに関する考え方に、米国ACIPのPCV13接種を含む推奨内容を全面的には取り入れるべきではないと判断した。一方、本合同委員会としては、わが国の実地臨床医家に対してPCV13接種の可能な選択肢を示すことが必要であるが、日本独自の臨床的、医療経済的エビデンスは確定していないため、主に安全性の観点から「65歳以上の成人における肺炎球菌ワクチン接種の考え方」として提示することとした。

2.第2版の「考え方」における見解(2017年10月)
 2017年10月時点で、第1版の「考え方」を公開(2014年9月)後の65歳以上の成人に対するPCV13の臨床効果に関する追加情報はない。
 わが国の成人におけるIPD原因菌及び65歳以上の成人の肺炎球菌性肺炎の原因菌のPCV13とPPSV23による血清型カバー率はいずれも不変またはやや減少傾向である。
 米国CDCが示した65歳以上の成人に対するPCV13追加接種の費用対効果の妥当性に関して、2014年時点での検討には、PCV13による小児定期接種導入の集団免疫効果(65歳以上の成人における肺炎球菌性肺炎患者数の減少)並びにPPSV23の65歳以上の成人における肺炎球菌性肺炎に対するワクチン効果(直接効果)が反映されていない。さらに、2017年になってPPSV23の65歳以上の成人における肺炎球菌性肺炎に対するワクチン効果に関する新たなエビデンスも加わったことから7)、今後、65歳以上の成人の肺炎球菌性肺炎に対するPPSV23の費用対効果を再評価する必要がある。
 以上より、現時点においても米国ACIPのPCV13-PPSV23連続接種の推奨を全面的には受け入れるべきではないと考える。現在、わが国の日本医療研究開発機構(AMED)研究班(新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業:ワクチンによって予防可能な疾患のサーベイランス強化と新規ワクチンの創出等に関する研究)において、1)高齢者における肺炎球菌性肺炎の原因菌のワクチンカバー率、2)PCV13-PPSV23連続接種による安全性と免疫原性、3)PCV13-PPSV23連続接種の費用対効果について分析を進めている。今後は、米国ACIPが2018年に予定している成人におけるPCV13推奨の見直し内容とわが国の研究班の分析結果を踏まえ、PCV13-PPSV23連続接種の推奨の是非について、本合同委員会で再評価を行う。

3)PPSV23の定期接種について

 PPSV23(ニューモバックスNP)は1988年に薬事承認された。これまでのわが国における65歳以上の成人に対する接種による安全性、臨床効果、費用対効果等の評価8)から、厚生科学審議会予防接種部会ワクチン分科会は肺炎球菌感染症(成人)のB類疾病としての定期接種化の方針を決定し、平成26年10月1日よりPPSV23の定期接種が開始された。具体的には、65歳以上の者及び60歳以上65歳未満で日常生活が極度に制限される程度の基礎疾患を有する者を対象に、PPSV23を1回接種とすることとなっている。また、ワクチン分科会の決定に従い、平成26年10月1日〜平成31(2019)年3月31日までの間、時限措置として、各年度に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳または100歳となる者および平成26年10月1日〜平成27(2015)年3月31日までの間においては100歳以上の者も接種対象とする9)今回の合同委員会の考え方としては、定期接種対象者が定期接種によるPPSV23の接種を受けられるように接種スケジュールを決定することを推奨する。
 また、PPSV23の定期接種導入前の2011年9月から2014年8月の期間に国内でtest-negative designによって実施された多施設前向き研究において、65歳以上の高齢者における市中発症肺炎に対するPPSV23のワクチン効果が報告された7)。5年以内のPPSV23接種のワクチン効果はすべての肺炎球菌性肺炎に対して27.4%、ワクチン血清型の肺炎球菌性肺炎に対して33.5%であった。

4)成人におけるPCV13の位置づけ

 海外データ及び国内データから、65歳以上の成人に対するPCV13の安全性はPPSV23とほぼ同等、またPCV13の免疫原性は同等もしくはPPSV23より優れている1-4)。また、PCV13は65歳以上の成人におけるワクチン含有型の侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)のみならず菌血症を伴わない肺炎球菌性肺炎を有意に減少させたと報告されている5)。一方、厚生労働省研究班(2016年度より「成人の侵襲性細菌感染症サーベイランスの構築に関する研究」において、2013年4月〜2016年12月の期間に成人IPDの臨床像と原因菌(n=742株)の血清型分布が検討された10)。本調査期間におけるIPD原因菌のPCV13とPPSV23による血清型カバー率はそれぞれ40%、67%であった。また、2016年のIPD原因菌のPCV13とPPSV23による血清型カバー率はそれぞれ37%、66%であった。
 わが国で2011年9月〜2013年1月に実施された成人の肺炎球菌性肺炎の疫学調査における原因菌のPCV13とPPSV23による血清型カバー率はそれぞれ49%、63%であったと報告されている11)。同研究グループによるその後のAMED研究班「ワクチンによって予防可能な疾患のサーベイランス強化と新規ワクチンの創出等に関する研究」報告によれば、2016年度の疫学調査では原因菌のPCV13とPPSV23による血清型カバー率は37%、48%と減少していた12)。また、単一医療機関における成人の肺炎球菌性肺炎の原因菌171株の血清型解析においても、2011年から2015年の期間におけるPCV13とPPSV23による血清型カバー率はそれぞれ71.4%から33.3%、71.4%から50%まで減少した13)
 しかしながら、国内におけるPPSV23血清型による成人のIPDや肺炎球菌性肺炎の罹患率が、小児及び成人の定期接種導入前後で減少したという報告はない。

5)PCV13-PPSV23連続接種の考え方(資料1参照)

 米国ACIPは2014年9月にMMWR誌上で、PCV13、PPSV23を含む成人の肺炎球菌ワクチンの推奨について発表した。すなわち、米国ACIPはこれまでに肺炎球菌ワクチンの接種歴が無い、または接種歴不明の65歳以上の成人に対して、PCV13の初回接種後6〜12ヶ月の間隔でのPPSV23の追加接種(PCV13-PPSV23連続接種)を推奨した6)。この連続接種の考え方(資料2参照)としては、免疫原性が高いが、血清型カバー率が低いPCV13を接種し、その6〜12か月後にPPSV23を追加接種することで、肺炎球菌ワクチンとしての血清型カバー率を拡大し、両ワクチンに共通な12血清型に対する特異抗体のブースター効果を期待している。この連続接種により肺炎球菌ワクチンの予防効果を増強、拡大する可能性が期待される。しかしながら、PCV13は任意接種ワクチンであり、また短期間での連続接種の安全性は国内では確認されておらず、さらに連続接種による臨床効果のエビデンスは国内外を通じて示されていない。なお、2015年6月にACIPは米国のCenter for Medicare & Medicaid Serviceのポリシーに基づいて、PCV13初回接種後のPPSV23の接種間隔を1年以上にすべき、と推奨内容を修正した14)。その後、前述の成人PCV13の追加接種に関する米国ACIPの推奨は費用対効果の点からも妥当だと判断する論文が報告された15)
 また、米国CDCは2017年7月に、2009年9月19日から2016年9月18日の間に、65歳以上の成人の31.5%が少なくとも1回のPCV13接種を、18.3%がそれぞれ少なくとも1回のPCV13とPPSV23接種をしたことをMMWR誌上で報告している16)

6)PPSV23とPCV13の併用接種時の接種間隔に関する原則的な考え方

  1. PPSV23の再接種間隔
     PPSV23接種後5年以上の間隔をおいてPPSV23を再接種することが可能である17)
  2. PCV13接種後のPPSV23の接種間隔
     PCV13とPPSV23の接種間隔については、その安全性と両ワクチンに共通な血清型特異抗体のブースター効果が確認されている6か月から4年以内に行う17-21)ことが推奨される。それ以上の接種間隔を空けた場合、PPSV23によるブースター効果が得られるか否かについてはエビデンスが示されていない。
  3. PPSV23接種後のPCV13の接種間隔
     PPSV23接種後のPCV13接種について、PCV13接種によって先行するPPSV23接種後以上の免疫応答は得られないものの、1年の間隔が保たれれば、その安全性には問題が無いことが確認されている18)

7)定期接種開始後の肺炎球菌ワクチン接種の具体的考え方

平成27〜30年度の接種について(図1

  1. PPSV23未接種者について
    1. PPSV23の定期接種
       PPSV23未接種で、平成27〜30年度に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳の成人は、PPSV23の定期接種の対象となる。PPSV23接種後5年以上の間隔をおいてPPSV23の再接種17)、もしくは1年以上の間隔をおいてPCV13-PPSV23の連続接種をすることも考えられる18)。PCV13とPPSV23の接種間隔については、6か月から4年が適切と考えられる18-22)
    2. PPSV23の任意接種
       PPSV23未接種で、当該年の定期接種対象でない65歳以上の成人は、PPSV23を任意接種として接種できる。自治体によっては、65歳以上の成人に公費助成を行っている。PPSV23接種後5年以上の間隔をおいてPPSV23の再接種17)、もしくは1年以上の間隔をおいてPCV13-PPSV23の連続接種をすることも考えられる18)。PCV13とPPSV23の接種間隔については、6か月から4年が適切と考えられる18-22)。この場合もPPSV23の再接種間隔は5年以上が必要である。
    3. PCV13の任意接種
       PPSV23未接種で、平成28〜30年度の定期接種対象者については、PCV13の任意接種を終了し、その6か月以降にPPSV23の定期接種あるいはPPSV23の任意接種を受けることができる。PCV13接種後にPPSV23を接種する場合には、6か月から4年が適切と考えられる18-22)
  2. PPSV23既接種者について
     PPSV23既接種者は定期接種の対象外となる。PPSV23接種後5年以上の間隔をおいてPPSV23の再接種17)、もしくはPPSV23接種後1年以上の間隔をおいてPCV13の接種をすることも考えられる18)。PCV13接種後にPPSV23を再接種する場合には、6か月から4年が適切と考えられる18-22)が、それ以降でも接種可能である。この場合もPPSV23の再接種間隔は5年以上が必要である。

(図1)
65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(2017年10月)

8)おわりに

 小児におけるPCV7/PCV13の定期接種導入による間接効果により、成人の肺炎球菌感染症の罹患率及び原因菌の血清型分布が変化する中、本合同委員会は「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチンに関する考え方」を示した。米国ACIPが推奨する連続接種により肺炎球菌ワクチンの予防効果を増強、拡大する可能性に期待する考え方もあるが、確たるビデンスは未だ示されていないため、本委員会としてはあくまでも参考意見として紹介するにとどめる。今後、2018年に予定されている米国ACIPの推奨見直し、研究班での連続接種の妥当性の検討を待って、本合同委員会としての最終的な見解を示したい。この「考え方」が実地臨床医家の65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の参考になれば幸いである。尚、この「考え方」においては、米国ACIPが推奨する免疫不全者におけるPCV13-PPSV23の連続接種については触れないこととした23)

資料1.海外及び国内論文データ

1.免疫原性、安全性、臨床効果
 海外およびわが国における65歳以上の成人におけるPCV13単回接種1ヶ月後の血清オプソニン活性の検討結果から、PCV13の免疫原性はPPSV23のそれと同等もしくは優れていたと結論されている1-3)。また、海外における65歳以上の成人におけるPCV13単回接種後の安全性については、重篤な副反応は稀で、副反応の頻度もPPSV23と同等であったとされている4)
 オランダで実施された無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験(Community-Acquired Pneumonia Immunization Trial in Adults(CAPiTA)において、65歳以上の高齢者に対するPCV13のワクチン血清型の肺炎球菌に起因する市中肺炎に対する効果が評価された5)。本試験の参加者は2008年9月から2010年1月に、登録され、肺炎疑い症例のスクリーニングは2008年9月から2013年8月まで実施された。オランダでは2006年に小児の定期接種としてPCV7が導入され、2011年にPCV10に置きかわった。また、本試験の実施当時において、PPSV23及びPCV13は高齢者の定期接種に導入されていなかった。本試験の参加基準は、肺炎球菌ワクチン未接種で、免疫不全状態を欠くことである。
 初回エピソードの比較では、市中肺炎においてPCV13群(n=42,240)で49名の症例、プラセボ群(n=42,256)で90名の症例(ワクチン効果45.6%、95%信頼区間:21.8〜62.5)が報告された。菌血症を伴わない、非侵襲性市中肺炎では、PCV13接種群で33名の症例、プラセボ群で60名の症例(ワクチン効果45.0%、95%信頼区間:14.2〜65.3)が報告された。IPDでは、PCV13接種群で7名、フラセボ群で28名(ワクチン効果75.0%、95%信頼区間で41.4〜90.8)の症例が報告された。Intention-to-treat分析でも同様の効果が得られた(市中肺炎:37.7%、菌血症を伴わない非侵襲性市中肺炎:41.1%、IPD:75.8%であった)。全ての原因による市中肺炎については、PCV13接種群で747症例、プラセボ群で787例が報告された(ワクチン効果5.1%、95%信頼区間:-5.2〜14.2)。以上の結果から、65歳以上の高齢者において、PCV13はワクチン血清型による市中肺炎を45.6%予防し、ワクチン血清型による菌血症を伴わない市中肺炎を45.0%予防し、ワクチン血清型によるIPDを75.0%予防した。PCV13によるワクチン血清型による市中肺炎に対する予防効果は衰退することなく、約4年間持続した。しかしながら、PCV13接種による全ての原因による市中肺炎に対する効果及び肺炎球菌性肺炎あるいはIPDによる死亡の抑制効果は認められなかった5)

2.国内の原因菌の血清型カバー率
 わが国では2010年11月に小児に対するPCV7の公費助成が開始された。その後、2013年4月からPCV7は5歳未満の小児を対象に定期接種化(A類)され、さらに2013年11月からはPCV7はPCV13に切り替わった。2007年から始まった「ワクチンの有用性向上のためのエビデンスおよび方策に関する研究」(庵原・神谷班)において、5歳未満の人口10万人当たりのIPD罹患率は、2008-2010年に比較して2013年度までに57%減少したとされている24)。また、PCV7公費助成・定期接種化後の2013年には、血清型はPCV7非含有血清型の割合が増加した。結果的に、PCV7公費助成前(2010年)のIPD原因菌のPCV7含有血清型カバー率は78.5%であったのに対し、公費助成・定期接種化後(2013年)には3.3%にまで著明に低下しており、わが国の小児IPDにおけるPCV7導入後の血清型置換が明確になっている。
 2010年4月から2013年3月までの期間に、わが国における成人IPDの原因菌(n=715)の血清型分布が検討された25)。小児に対して7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)の公費助成が2010年11月に開始されたことに伴い、本研究期間中にPCV7ワクチン血清型によるIPDの原因菌の割合が43.3%から23.8%に減少、PCV13ワクチン血清型は73.8%から54.2%に減少、PPSV23ワクチン血清型は82.2%から72.2%に減少した。
 厚生労働省研究班(2016年度より「成人の侵襲性細菌感染症サーベイランスの構築に関する研究」において、2013年4月〜2015年3月の期間に成人IPD 291症例(年齢中央値70歳)の臨床像とその原因菌の血清型分布が検討された26)。本調査において、成人IPD患者の血清型分布は、2006〜2007年の血清型分布と比較して、PCV7ワクチン血清型の比率が相対的に減少し、小児の定期接種ワクチンによる間接効果が示唆された。本調査におけるIPD原因菌のPCV7、PCV13とPPSV23による血清型カバー率はそれぞれ12%、46%、66%であった。
 単一医療機関における成人の肺炎球菌性肺炎171症例(年齢平均67.7歳)の臨床像と原因菌の血清型分布が検討された。2011年から2015年の研究期間において、原因菌のPCV13血清型カバー率とPPSV23血清型カバー率はそれぞれ71.4%から33.3%、71.4%から50%まで減少した13)

わが国の成人のIPD及び肺炎球菌性肺炎の原因菌の血清型については、今後もPCV13、PPSV23による血清型カバー率の変化が予想され、継続的調査が必要である。

3.海外の予防接種制度
 高齢者に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する各国の対応は一律ではない。米国は資料2で示すように、CAPiTA試験の結果を基に65歳以上の成人に対してはPCV13−PPSV23連続接種を推奨している。この発表後に示された各国の定期接種制度における肺炎球菌ワクチン接種についての方針は下記の通りである。
 英国ではJCVI(Joint Committee on Vaccination and Immunization)がワクチン接種の方針を決めている。JCVIはPCV13の費用対効果分析において、良好な結果が見込まれないと判断し、PPSV23においては、この先数年で医療経済性は低下するかもしれないものの現時点では、依然として65歳以上の高齢者において、費用対効果は良好であると結論づけた。その結果、65歳以上の成人についてはPPSV23の接種を継続するとした27)
 ドイツではSTIKO(Standing Committee on Vaccination)がワクチン接種の方針を決めている。STIKOはこれまでに発表された論文を精査し、PCV13−PPSV23連続接種は、予防可能症例数の増加分が少なく、NNV(Number needed to vaccinate;1人の肺炎による入院や死亡を防ぐために、何人にワクチンを接種する必要があるかを示す)とコストが大きいことから、高齢者への標準ワクチンとして推奨しないとした28)。また、60歳以上の成人への標準ワクチンとしてはPPSV23の推奨を継続するとした。
 フランスはハイリスク患者に肺炎球菌ワクチンを推奨しているが、65歳以上の成人にはとくに推奨はしていない29)。カナダとオーストラリアは65歳以上の成人にはPPSV23接種を推奨としており、以前の方針の変更はない30、31)
 以上のように現時点では上記の国々では、フランスを除いて65歳以上の成人にはPPSV23が推奨されている。各国とも定期接種としてのワクチン接種については、免疫原性、安全性、有効性、費用対効果等を評価し、各国の状況(患者数、血清型の分布、薬価など)により独自の方針が決められている。日本でも同様の対応が必要であろう。

資料2.米国ACIPの推奨

 米国ACIPは2014年9月にMMWR誌上で、これまでに肺炎球菌ワクチンの接種歴が無い、または接種歴不明の65歳以上の成人に対して、PCV13の初回接種後6〜12か月の間隔でのPPSV23の追加接種(PCV13-PPSV23連続接種)を推奨した6)。このPCV13-PPSV23の連続接種の利点は、成人ではPCV13接種後に、被接種者に13血清型ワクチン血清型特異的なメモリーB細胞が誘導され、その後のPPSV23接種により両ワクチンに共通な12血清型に対する特異抗体のブースター効果が期待されることである。さらに、PPSV23接種によりPCV13に含まれない11血清型に対する特異抗体誘導も期待される。
 また、米国ACIPは、既にPPSV23を接種した65歳以上の成人に対しては、1年以上の間隔をおいてPCV13の接種を推奨した。さらに、PCV13接種後のPPSV23接種を考慮する場合はPCV13接種後6〜12か月の間隔を置き、また前回のPPSV23接種後5年以上の間隔を置くことが求められている。2015年6月にACIPは、PCV13とPPSV23の至適接種間隔については1年以上にすべきと推奨内容を修正した14)
 また、米国ACIPによる推奨変更の根拠となった成人PCV13の追加接種の費用対効果に関する論文が発表された15)。それによると、PPSV23にPCV13を追加接種するプログラム(65歳におけるPCV13-PPSV23連続接種)では、IPD並びに肺炎球菌性肺炎による感染者と死亡者が減少し、質調整生存年(QALY: Quality-Adjusted Life Year)が延長することから、1年分のQALYを獲得するために必要な費用は6.2万ドル(約680万円)と費用対効果に優れることが示された。同様にPCV13に切り替える場合(PCV13を65歳で単独接種)の費用対効果も悪くなかったが、IPDによる感染者並びに死亡者は逆に増加する可能性が示された。これらの分析結果を踏まえて、ACIPではPCV13の追加接種を2014年に認めた。一方、この分析を行った時点では、小児へのPCV13接種プログラムによる集団免疫効果(65歳以上の成人における肺炎球菌性肺炎患者数の減少)並びにPPSV23の肺炎球菌性肺炎に対する予防効果に関しては十分なエビデンスがなく、これらの情報が費用対効果に大きな影響を与えることが感度分析によって明らかになっている。例えば、集団免疫効果の影響は年々大きくなり、1年分のQALYを獲得するために必要な費用は6年後には27.3万ドル(約3000万円)と非常に高額になる。以上の点を踏まえて、ACIPが2018年に予定している費用対効果の再分析を踏まえて、我が国においても集団免疫効果の影響並びに市中肺炎を含む肺炎球菌性肺炎に対する予防効果に関する情報を追加した上で、費用対効果を再度評価する必要があると考えられた。

(参考文献)

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31)The Australian Immunisation Handbook 10th Edition, 4.13 Pneumococcal disease http://www.immunise.health.gov.au/internet/immunise/publishing.nsf/Content/
Handbook10-home
. (updated 01 August 2017)

平成29年10月23日
日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討WG委員会/日本感染症学会ワクチン委員会・合同委員会
(大石和徳[委員長]、岩田 敏、岡田賢司、河野 茂、朝野和典、永井英明、二木芳人、丸山貴也、宮下修行、渡辺 彰)


更新履歴

65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(アップデート版 2015-9-5)

65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(2015-1-5)