日本感染症学会

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麻疹の流行と予防について

最終更新日:2011年5月6日

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東日本大震災被災地における麻しん予防についての提言

 平成23年4月22日事務連絡として、厚生労働省健康局結核感染症課から各都道府県衛生主管部局宛てに「麻しん患者の増加について」が発出されました。それによりますと、東京都区部と神奈川県において本年第15週(4月11日から17日)から麻しん患者の増加が認められているので、今後の流行が懸念されるため、麻しんワクチンの高い接種率を確保するなど、麻しんに対する一層の対策強化を実施することが求められております。被災地においては、避難所等での集団生活が続いており、感染症が流行しやすい状況にあるため、麻しんの発生には十分な注意を払う必要があります。一方今回の震災では、住民の居住地外への避難、行政当局や医療機関の被災、医薬品確保困難等の理由から、被災地における予防接種の実施が滞っていることが懸念されます。
 そこで、(社)日本感染症学会は被災地における麻しん流行予防の観点から、下記の点について提言し、注意を喚起したいと考えます。

  1. 既に厚生労働省からの事務連絡にもあるとおり、麻しん・風しん二種混合ワクチンの定期接種対象者(I期:生後12か月以上24か月未満、II期:5歳以上7歳未満の者であって、小学校入学前の1年間、III期:中学1年生に相当する年齢の者―年度内に13歳になる者―、IV期:高校3年生に相当する年齢の者―年度内に18歳になる者―)でワクチン未接種の方は、速やかにワクチンを接種するようにしてください。また各医療機関においては、母子健康手帳で2回のワクチン接種歴を確認し、不足している対象者に対してワクチン接種を積極的に勧奨してください。
  2. 被災者が居住地以外の市町村において予防接種を希望する場合は、「予防接種実施依頼書がない場合においても、希望地の長は被災者からの申し出をもって居住地の長からの予防接種実施依頼があったものとし、予防接種を実施して差し支えない」とした、平成23年3月16日に厚生労働省健康局結核感染症課から各都道府県衛生主管部局宛てに発出された事務連絡「東北地方太平洋沖地震に伴う予防接種の取扱について」に配慮し、各自治体は速やかな手続きを行ってください。
  3. 業務・ボランティア活動等で被災地において活動される方は、自身が麻しんに対する免疫を持っていることを確認の上、活動するようにしてください。麻しんに対する免疫を持っているというのは、(1)十分な麻しん抗体を持っていることが医師により確認されている場合、(2)麻しんワクチン(麻しん・風しん二種混合(MR)ワクチン、麻しん・ムンプス・風しん三種混合(MMR)ワクチンを含む)の2回以上の接種歴がある場合、(3)医師によって診断された明らかな麻しんの既往がある場合のいずれかの場合をいいます。
    自身が麻しんに対する免疫を持っていることを確認ができない場合は、麻疹あるいは麻疹風疹混合(MR)ワクチンを接種したうえで、被災地での業務・ボランティア活動等に従事することが望ましいと考えます。

2011年5月6日

社団法人日本感染症学会
理事長 岩本 愛吉
ワクチン委員会
委員長 岩田  敏

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