日本感染症学会症状からアプローチするインバウンド感染症への対応~東京2020大会にむけて~|感染症クイック・リファレンス

最終更新日:2019年7月23日

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ウイルス性出血熱(viral hemorrhagic fever)

病原体、感染経路、流行地域、予後

  エボラ出血熱 マールブルグ病 クリミア・コンゴ出血熱 ラッサ熱 南米出血熱
病原微生物 フィロウイルス科
エボラウイルス属
フィロウイルス科
マールブルグウイルス
ブニヤウイルス科ナイロウイルス属CCHFウイルス アレナウイルス科ラッサウイルス アルゼンチン出血熱
フニンウイルス
ボリビア出血熱、マチュポウイルス
ベネズエラ出血熱、グアナリトウイルス
ブラジル出血熱、サビアウイルス
宿主 コウモリ? オオコウモリ マダニ
哺乳類(家畜など)
マストミス げっ歯類
感染経路 コウモリや霊長類?からヒト
ヒトからヒト
オオコウモリや霊長類からヒト
ヒトからヒト
マダニや家畜からヒト
ヒトからヒト
マストミスからヒト
ヒトからヒト
げっ歯類からヒト
ヒトからヒト
潜伏期 2-21日 3-16日 3-12日 5-16日 7-14日
流行地域 ウガンダ
コンゴ民主共和国西アフリカなど
サハラ以南アフリカ アフリカ
中東
バルカン半島
ロシア南部
中国西部
西アフリカ 南米
致死率 25-90% 25-90% 5-30% -15% 15-30%

発生頻度

散発的にアウトブレイクを起こしている。2019年5月現在、コンゴ民主共和国ではエボラ出血熱が流行しており1,700人を越える患者が報告されている。またナイジェリアでは近年1月-3月に毎年ラッサ熱患者が報告されている。

主要症状・検査所見

発熱に加えて頭痛、関節痛などの非特異的症状を呈する。マラリアなどの熱帯病と比べて消化器症状の頻度が高いのが特徴であり、出血症状を呈するのは全体のおよそ20%程度である。

感染対策

血液、体液、吐物、便などを介してヒト-ヒト感染することがある。病院内では患者の体液はすべて感染性があると考え体液曝露を防ぐために厳密な対策が必要である。具体的には、二重手袋、二重ガウン、ゴーグル、フェイスシールド、N95マスク、シューズカバーを装着する個人防護具での診療が推奨される。

法制度、疑った場合の対応

表の5疾患は感染症法で1類感染症に指定されており、ウイルス性出血熱が疑われた場合直ちに最寄りの保健所に連絡する。疑似症を含め、確定患者、無症状病原体保有者、死亡者について直ちに届け出て、特定または第一種感染症指定医療機関に搬送される。

診断

ウイルス性出血熱の流行地域への海外渡航歴があり、患者や媒介動物への曝露歴がある発熱患者ではウイルス性出血熱を疑い保健所に連絡を行う。
それぞれ、血清を用いたPCR法での診断が原則である。検査は行政検査として国立感染症研究所で行われる。

治療(応急対応)

治療は対症療法が中心となり、重症度によっては集中治療を要する。ラッサ熱に対するリバビリンなど一部有効性が証明されている薬剤が存在する。

専門施設に送るべき判断

ウイルス性出血熱を疑った場合、最寄りの保健所に連絡する。

専門施設、相談先

国立国際医療研究センター 国際感染症センター

役立つサイト、資料

  1. WHO. Ebola situation reports: Democratic Republic of the Congo. https://www.who.int/ebola/situation-reports/drc-2018/en/
  2. 国立感染症研究所. ウイルス性出血熱. https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/a/vhf.html

(利益相反自己申告:研究費・助成金等(栄研化学株式会社))

国立国際医療研究センター 忽那賢志

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