日本感染症学会症状からアプローチするインバウンド感染症への対応~東京2020大会にむけて~|感染症クイック・リファレンス

最終更新日:2021年7月21日

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

病原体

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)

感染経路

飛沫感染が主であり、一部接触感染でも感染する。

流行地域・発生頻度

2021年6月時点では、世界中で1億7000万人が感染し、350万人が死亡している。ほぼ全ての国で感染例が報告されているが、これまでは特にアメリカ合衆国、ブラジル、インドでの感染者が多い。
変異株も拡大しており、日本国内では2021年6月時点では感染力が増してるとされるアルファ(B.1.1.7)が主流に置き換わってきている。

潜伏期間・主要症状・検査所見

潜伏期間は1~14日で平均約5日である。発症早期は発熱・鼻汁・咽頭痛・咳嗽といった非特異的な上気道炎の症状を呈し、ときに嗅覚異常・味覚異常を訴えることがある。感染者の約20%程度が発症から7日目前後で肺炎が悪化し酸素投与が必要となり、全体の約5%が集中治療室に入室したり人工呼吸管理を要する重症となる。肺炎を合併する事例では、両側性の浸潤影・すりガラス影が特徴的である。

予後

2021年6月時点で世界における致命率は2.1%であり、日本国内における致命率は1.7%である。特に基礎疾患を持つ患者や高齢者で予後が悪い。

感染対策

標準予防策に加えて、飛沫予防策、接触予防策を行う。結膜を介した感染も懸念されることからアイシールドも使用が推奨される。エアロゾル発生手技(喀痰吸引や気管挿管など)では空気予防策が必要である。

法制度

2020年2月1日から指定感染症に定められ、2021年2月13日から新型インフルエンザ等感染症に変更となった。当初は感染症指定医療機関で診療が行われていたが、現在は感染症指定医療機関以外の医療機関でも診療が行われており、また自治体の判断で自宅療養、ホテル療養も可能となっている。

診断

診断はPCR検査または抗原検査によってなされる。鼻咽頭拭い液または唾液が検体として用いられることが多い。

診断した場合の対応

新型コロナウイルス感染症と診断した医師は、管轄の保健所に直ちに届出を行う。

治療(応急対応)

新型コロナウイルス感染症は、発症後しばらくの間はウイルスが増殖しており抗ウイルス薬が有効と考えられ、また重症化してくる頃には過剰な炎症反応が主病態となる。したがって、病期を適切に捉えた上で、抗ウイルス薬と抗炎症薬とを組み合わせることが重要である。2021年6月時点で国内承認されている抗ウイルス薬にはレムデシビルが、抗炎症薬にはデキサメタゾン、バリシチニブがある。また凝固異常も病態に関わっていることから、ヘパリンなどの抗凝固薬を併用することも一般的となっている。

予防

2021年6月現在、3つのワクチンが承認されており、2つのmRNAワクチンの接種が行われている。

専門施設に送るべき判断

自施設内で適切な感染対策が行えない場合や、重症例への対応が困難な場合など。

専門施設、相談先

地域ごとに各地域の自治体に問い合わせることが望ましい。

役立つサイト、資料

  1. 厚生労働省. 新型コロナウイルス感染症について.
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
  2. World Health Organization. Coronavirus disease (COVID-19) pandemic.
    https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019

(利益相反自己申告:申告すべきものなし)

大阪大学 忽那賢志

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