⚠ 緊急注意喚起 | 国内外での麻しん症例増加について | 日本感染症学会
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Japanese Association for Infectious Diseases (JAID)
2026年3月 発行
感染症情報 緊急公開
緊急注意喚起

麻しん(はしか)が世界・国内で
増加しています

米国・英国をはじめ世界各地で麻しんの流行が拡大しています。日本でも感染報告が急増しています。 麻しんは感染力が極めて強く、適切なワクチン接種を受けていなければ誰でも感染するリスクがあります。 本学会は国民の皆様に、最新情報と適切な対応についてお伝えします。

962例 米サウスカロライナ州
2025年10月以降
34例 英ロンドン北部
2026年初頭
95%以上 流行防止に必要な
ワクチンの2回接種率
5,900万 ワクチン導入後に
救われた命(世界)
📢

日本感染症学会からのメッセージ

麻しんは「子どもの病気」と軽く見られがちですが、重篤な合併症を引き起こし、死亡することもある重大な感染症です。 ワクチンで確実に予防できます。まずご自身と家族のワクチン接種歴をご確認ください。

🦠
SECTION 01

麻しん(はしか)とはどんな病気か

麻しんは、麻しんウイルス(Measles virus)による急性ウイルス感染症です。感染力は現存するすべての感染症のなかで最強クラスで、家庭内などの密接な接触環境では、免疫のない人が感染者にさらされた場合、約90%が感染すると報告されています(CDC: Epidemiology and Prevention of Vaccine-Preventable Diseases, Pink Book)。また、どんなに広い場所でも、空間を共有したら感染する可能性があります。

ウイルスは咳やくしゃみによる飛沫だけでなく、空気感染(飛沫核感染)もします。換気が悪い室内では、感染者がいなくなった後もウイルスが漂い、感染リスクが続きます。

🔴 感染力の強さ

  • 基本再生産数(R₀)= 12〜18
  • インフルエンザの約10倍の感染力
  • 空気感染・飛沫感染・接触感染
  • 家庭内密接接触での二次発症率は約90%(CDC Pink Book)

📋 潜伏期間・周りへの感染可能期間

  • 感染から発症まで 7〜21日(平均10〜12日)
  • 発症の1日前から解熱後3日を経過するまで感染力あり
  • 症状がなくても他者に移す期間がある

👶 誰がかかりやすいか

  • ワクチン未接種・接種歴不明の方
  • 1回のみ接種(2回未完了)の方
  • 過去に罹患歴のない成人
  • 1歳未満の乳児(母親の免疫が弱まった場合)
🌡️
SECTION 02

症状の経過と重篤な合併症

第1〜4病日:カタル期

38〜39℃の発熱、鼻水、咳、結膜炎

この段階が最も感染力が高い時期です。風邪と見分けがつきにくく、特徴的な口の中の白い斑点(コプリック斑)が2〜3日間だけ現れます。

第4〜5病日:発疹期

高熱(40℃前後)と全身への発疹拡大

耳の後ろ・顔から始まる赤い発疹が、体幹・四肢へと広がります。発熱が再上昇し、この時期が最も体調が悪くなります。

第7〜10病日:回復期

発疹の消退と解熱

合併症がなければ徐々に回復しますが、麻しんウイルスは感染後に既存の免疫記憶細胞を破壊するため、免疫機能の低下が数週間〜数ヶ月続きます。これを免疫健忘(immune amnesia)といい、回復後も他の感染症にかかりやすくなることが知られています。

ℹ️ 修飾麻疹(modified measles)に注意

近年、1回のワクチン接種を受けた方や、過去に接種歴のある方が麻しんに感染した場合、上記の典型的な経過をたどらない「修飾麻疹」の報告が増加しています。発熱が軽度だったり、発疹が淡く分かりにくかったり、コプリック斑が見られないこともあります。症状が軽くても感染力は保持されている場合があるため、麻しんの流行期には「発熱+発疹」があれば麻しんを疑い、医療機関にご相談ください。

⚠️ 重篤な合併症(軽視できません)

  • 肺炎(麻しん肺炎):入院を要することが多く、特に乳幼児・免疫不全者で重症化しやすい
  • 脳炎(麻しん脳炎):約1,000人に1人に発症。後遺症として知的障害・麻痺が残ることがある
  • SSPE(亜急性硬化性全脳炎):数年後に発症する致死的な脳炎。1歳未満の罹患で発症率が高い
  • 中耳炎:頻度が高い合併症。難聴につながることも
  • 角膜炎・失明:栄養状態が悪い場合に特に多い
  • 死亡:先進国でも1,000〜2,000人に1人程度。発展途上国ではさらに高い

⚠ 「はしかは子どもの軽い病気」は間違いです

ワクチン導入前の時代、世界では毎年約260万人が麻しんで死亡していました。小児はもちろんのこと、成人が感染しても重症化しやすく、妊婦が感染すると流産・早産のリスクが上昇します。

🔬
SECTION 03

診断と医療機関の受診について

麻しんを疑った場合は、まず医療機関に電話で連絡してから受診してください。待合室で他の患者さんに感染を広げないよう、受診方法について指示を受けることが重要です。

検査方法特徴タイミング
PCR検査(尿・鼻咽頭・血液) 最も感度・特異度が高い確定診断 発症後1〜7日
IgM抗体検査(血清) 感染から間もない時期に陽性 発疹出現後3〜28日
IgG抗体価(ペア血清) 回復期に2倍以上の上昇で確定(EIA法など連続値で示される測定系の場合) 急性期と回復期の2回採血

🔬 検査実施のタイミングについて

PCR検査は発疹出現後7日以内の実施、IgM抗体検査は発疹出現後4〜28日の実施をお願いしています。適切なタイミングで検査を受けることで、より正確な診断が可能になります。

🏥 受診前に必ず電話を

麻しんは感染症法の五類感染症(全数把握対象)です。診断した医師は直ちに保健所に届け出る義務があります。受診の際は「麻しんの可能性がある」と伝え、他の患者と接触しないよう隔離された場所で診察を受けられるよう配慮を求めてください。

💊
SECTION 04

治療について

現在、麻しんに対する特効薬(抗ウイルス薬)はありません。治療は症状に合わせた対症療法が中心となります。

💧 基本的な対処

  • 十分な安静と水分補給
  • 発熱に対する解熱剤(アセトアミノフェン)
  • 栄養管理(特にビタミンA補充が重要)
  • 咳・鼻水などへの対症療法

🏥 入院が必要なケース

  • 高熱・脱水が続く場合
  • 肺炎・呼吸困難を合併した場合
  • 脳炎の兆候(意識障害・けいれん)
  • 乳幼児・免疫不全者・妊婦の重症例

⚠ 二次感染(細菌性合併症)の治療

麻しんによる免疫力低下で細菌性肺炎・中耳炎などの二次感染が起こった場合は、抗菌薬が使用されます。しかし、最善の対策は感染そのものをワクチンで予防することです。

💉
SECTION 05

ワクチンによる予防が最善の対策

MRワクチン(麻しん・風しん混合)の2回接種で、ほぼ確実に予防できます

1回接種で約93〜95%、2回接種で97〜99%の予防効果があります。 麻しんの流行を防ぐには、集団全体のワクチン接種率を95%以上に維持することが必要です。

定期接種 第1期

1歳になったら速やかに

母親からの移行抗体が消えるこの時期が最初の接種機会です。1歳の誕生日後、できるだけ早く接種しましょう。

定期接種 第2期

就学前の1年間(小学校入学前年度)

1回目で免疫が十分につかなかった場合の補完・強化が目的です。この機会を逃さず、必ず2回接種を完了させましょう。

定期接種を受け損ねた方

気づいた時点でかかりつけ医に相談を

定期接種の機会を逃していても、接種は可能です(任意接種・自費)。接種歴が不明な場合も、追加接種に大きな問題はありません。

緊急接種(曝露後予防)

感染者と接触後72時間以内

麻しん患者と接触した可能性がある場合、72時間以内のワクチン接種で発症を防げる可能性があります。

年齢・世代別の接種の考え方

日本の定期接種制度の変遷により、生まれた年代によって接種状況が大きく異なります。ご自身の世代を確認してください。

対象世代
子ども
(1歳〜中学生)
✅ 定期接種2回が基本

1歳(第1期)と就学前1年間(第2期)の2回が定期接種の対象です。この2回を確実に受けることが、お子さんを守る最も重要な対策です。母子健康手帳で接種記録を必ず確認してください。

対象世代
概ね36歳以下
の成人
🔍 2回接種済みか確認を

2回定期接種が制度化された世代(1990年4月2日以降に生まれた方)ですが、接種歴が不明・1回のみの方も見られます。母子健康手帳で2回の記録を確認し、不明または未完了であれば、かかりつけ医に相談のうえ追加接種を検討してください。

対象世代
36〜59歳
の成人
⚠️ 2回接種が済んでいない方が多い世代

この世代(1990年4月1日以前に生まれた方)は定期接種制度の変更前にあたり、1回しか接種を受けていない方が多くいます。過去に麻しんにかかった確実な記憶がない方は、抗体検査で免疫を確認するか、かかりつけ医に相談のうえMRワクチンの追加接種(任意接種)を積極的に検討してください。

対象世代
60歳以上
の方
ℹ️ 原則、接種は不要

ワクチン導入(1966年)以前の生まれが多く、幼少期に麻しんに自然感染し、免疫をすでにお持ちの方がほとんどです。原則として追加接種は不要とされていますが、感染歴が全くない場合や免疫不全のある方は、かかりつけ医にご相談ください。

※年齢区分は目安です。接種歴・感染歴には個人差があります。判断に迷う場合はかかりつけ医にご相談ください。

ワクチン接種率と流行防止の目標

定期接種第1期(1歳児のMRワクチン接種率)の推移 出典:国立健康危機管理研究機構(JIHS)

目標 95%
2022年度
95.4%
95.4%
2023年度
94.9%
94.9%
2024年度
92.7%
92.7%
70%
75%
80%
85%
90%
95%
100%

※グラフの横軸は70〜100%のスケールで表示しています。

⚠ 2024年度は流行防止に必要な95%を下回っており、低下傾向が続いています。

ℹ️ 地域によって接種率に大きな差があります

都道府県・市区町村によっては、接種率が95%を大きく下回る地域も報告されています。詳細は国立健康危機管理研究機構(JIHS)の年報または厚生労働省「定期の予防接種実施状況」をご参照ください。お住まいの地域の状況が気になる方は、市区町村の保健センターにお問い合わせください。

⚠ 「一度かかれば免疫ができる」は昔の話

感染による自然免疫は終生免疫をもたらしますが、その代償として重篤な合併症や死亡のリスクがあります。ワクチンは安全・確実・低コストで予防できる現代医学の産物です。子どもが接種を受けられるかどうかは、保護者の方の判断にかかっています。

SECTION 06

よくあるご質問

ご質問回答
「子どもの頃に麻しんにかかった」と親に言われています。接種は必要ですか? 過去の感染が確実であれば免疫があると考えられます。ただし記憶や伝聞だけでは不確かなので、抗体検査(自費)をお勧めします。もし抗体価が十分に高ければ接種不要です。基準値以下の場合は医師の判断に基づいて1〜2回の接種が必要です。
ワクチンの副反応が心配です 接種後5〜12日頃に微熱・発疹が出ることがありますが、軽度で一過性です。重篤な副反応(アナフィラキシーなど)は極めてまれで、接種後30分の院内待機で対応可能です。麻しん感染のリスクと比べると、ワクチンの利益は圧倒的に上回ります。
妊娠中でも接種できますか? MRワクチンは生ワクチンのため、妊娠中は接種できません。妊娠前に2回接種を完了することが推奨されます。授乳中は接種可能です。
接種歴がわかりません。母子健康手帳がありません 接種歴が確認できず、罹患した確実な証拠もない場合は、「未接種」と考えて2回の接種を行うことが推奨されます。あるいは、抗体価を測定した上で、医師の判断に基づいて1〜2回の接種を行う選択肢もあります。
海外に行く予定があります 麻しんが流行している国・地域(欧米含む)への渡航前には、1歳以上で2回接種が完了しているか確認してください。0歳での接種は接種回数に含めません。未接種や接種歴不明の場合は出発2週間前までに接種を。

今すぐ確認してください:あなたと家族のワクチン接種歴

麻しんを予防する最善の方法は、ウイルスに曝露されても発症しないように十分な免疫を持っておくことです。母子健康手帳を確認し、ワクチン接種が未完了であれば、かかりつけ医にご相談ください。

STEP 01

母子健康手帳を確認

麻しんを含むワクチンが1歳以上で2回接種されているか記録で確認

STEP 02

抗体検査(必要に応じて)

接種歴不明の成人は抗体検査で免疫を確認

STEP 03

かかりつけ医に相談

未接種・接種歴不明の場合はワクチン接種を

STEP 04

周囲に情報を伝える

家族・知人にもこの情報を共有してください