MSSAによる咽後膿瘍
病歴
- 60代男性
- 受診10日前より右上腕の疼痛が出現し、頸椎症と診断。NSAID処方で経過観察された。受診2日前から発熱、頸部痛が出現し、頸椎MRIで化膿性脊椎炎を疑われ当院紹介となった。
- 既往歴:糖尿病(HbA1c:7.1%)、高血圧
治療経過
- 黄色ブドウ球菌による頸椎化膿性脊椎炎、敗血症、播種性血管内凝固症候群と診断し当科転科、ICU入室し人工呼吸管理を開始。
- DAPをTAZ/PIPCに追加したが、黄色ブドウ球菌がMSSAと判明後はCEZにde-escalationした。
- 第9病日、人工呼吸器を離脱したが四肢麻痺が顕在化し、再挿管の上MRI再検を行った。
画像所見1(入院時)
画像所見2(第9病白)
その後の経過
- 咽後膿瘍、後頸部膿瘍、頸椎硬膜外膿瘍、降下性縦隔炎と診断。
- 咽頭後壁切開排膿、気管切開+椎弓形成術を行った。
- 縦隔炎に対しては手術侵襲を考慮し保存的治療を選択。抗菌薬は髄液移行性を考慮しCTRXなどを使用した。四肢の不全麻痺が残存し、第276病日にリハビリテーション目的に転院された。
考察
- 本症例は症状および画像所見の経過から化膿性脊椎炎から続発性に咽後膿瘍を形成し降下性縦隔炎も合併するに至った病態が疑われた。
- 咽後膿瘍は小児においては上気道感染に続発する病態として知られている1)が、成人おいては咽頭を侵入門戸とする病態のほかに本症例と同様に化膿性脊椎炎に合併した報告が散見され、後方からの炎症波及でも同病態を来しうることに留意を要すると思われた。
1)守本倫子ら 小児救急疾患への対応。 日耳鼻.120; e942-945,2017