レジオネラ症サーベイランス事業

一般社団法人日本感染症学会
 

レジオネラ症サーベイランス事業

 レジオネラ症は全例届け出が義務付けられており、2018年には2130例、2019年には2314例と過去最高の報告があり、そして2020年のコロナ禍においても前年の約88%の2031例が報告されています。レジオネラ症の診断として、尿中抗原、喀痰のPCR/LAMPおよび培養、血清抗体価等がありますが、その多くは検査の簡便性から尿中抗原検査が主体となっています。しかし、これまで利用されてきた尿中抗原検査は主としてLegionella pneumophila血清群1(SG1)を検出するため、他のSGによるレジオネラ症の多くは正確に診断されていなかった可能性が考えられます。2019年に、新たな尿中抗原検出キットとして、L. pneumophila SG1からSG15が検出可能なリボテスト®が保険収載されましたが、その有用性に関する情報はまだ限定的です。レジオネラ症の診断率を高めるためには、尿中抗原検査に加え、特殊培地を用いた培養検査、呼吸器検体を用いた遺伝子診断、さらにはペア血清を用いた血清抗体価測定などをできる限り組み合わせて実施することが必要となります。本邦で経験されるレジオネラ症に対してどのような検査法が実施されているのかを把握することは重要であり、その結果をもとに本症の診断に関してどのような教育・啓発が必要であるのかを考えることができます。併せて、L. pneumophila SG1と、それ以外のSGおよび他のレジオネラ属菌による臨床的特徴(重症度、治療反応性、予後など)の違いに関して検討することは、今後のレジオネラ症診療において重要な情報をもたらすことが期待されます。
 このような背景から、日本感染症学会では会員の全国ネットワークを活用することで、1)レジオネラ症診断のための検査法の実施状況を把握するとともに、2)レジオネラ症確定例における各種尿中抗原検査の特徴、およびL. pneumophila SG1とそれ以外のSGおよび他のレジオネラ属菌によるレジオネラ症の臨床的特徴の違いを明らかにすることを目的として臨床研究を実施しています。

2022年3月1日

一般社団法人日本感染症学会
レジオネラ症サーベイランス研究ワーキンググループ
委員長 川上 和義

研究の詳細

 
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