感染症アトラス

一般社団法人日本感染症学会

アメーバ性腸炎

症例の経過

  • 20歳代 男性
  • 主訴:発熱,下痢,腹痛
  • 現病歴
    痔瘻にて近医で切開排膿.抗菌薬内服し軽快
    しかしその後37℃台の発熱,下痢,腹痛持続
    軽快傾向なく総合病院消化器内科紹介受診
  • 既往歴・家族歴・生活歴に特記すべき事なし
  • 海外渡航歴なし

初診時血液検査所見

初診時血液検査所見

内視鏡所見

内視鏡所見

白苔の付着した小潰瘍、びらんを認めた

病理所見(HE染色)

病理所見(HE染色)

  • 赤痢アメーバ栄養体を多数認める
  • 一部は赤血球を貪食している(矢印)


病理所見(HE染色)

病理所見(HE染色)

PAS染色

PAS染色

  • 赤痢アメーバ栄養体のグリコーゲンが染まり,PAS染色陽性となる

アメーバ性腸炎の内視鏡的特徴

  • 盲腸が好発部位,次いで直腸
  • アフタ,びらん,白苔,たこいぼ状変化が特徴的所見

アメーバ性腸炎の内視鏡的特徴

アメーバ性腸炎の治療

  • メトロニダゾール内服
  • 1回500mg,1日3回,10日間
  • 食欲低下,心窩部不快感,疲労感などに注意

アメーバ性腸炎の治療

アメーバ性腸炎

  • 赤痢アメーバEntamoeba histolyticaの大腸粘膜への感染で発症する
  • 慢性下痢,血便,腹痛が主な症状
  • 性感染症の一つと認識されている
  • 赤痢アメーバの感染に起因する疾患は,「アメーバ赤痢」として五類感染症に分類される
    • 7日以内に都道府県知事(最寄りの保健所などを経由して)に届出

アメーバ性腸炎の各種診断・所見の感度

1. 腸液の鏡検 70%
2. 生検組織の鏡検 88%(HE,PAS染色とも)
3. アメーバ抗体法 87%
4. 白苔所見 88%
5. たこいぼ所見 12%(特異度は95%)

IASR Vol.37 p246-8, 2016

その他の内視鏡画像例:たこいぼ変化

その他の内視鏡画像例:たこいぼ変化

本症例での追加検査

  • HIV-1 RNA定量  4.0×104 cp/mL
  • CD4 = 138

HIV感染症に合併する下部消化管疾患

  • 原虫疾患
    • 赤痢アメーバ
    • ランブル鞭毛虫
    • クリプトスポリジウム
  • 細菌性疾患
    • カンピロバクター,サルモネラなど
  • ウイルス性疾患
    • サイトメガロウイルス(CMV)
    • ヒトパピローマウイルス(HPV)

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