感染症アトラス

一般社団法人日本感染症学会

梅毒

患者

  • 40歳代 男性
  • 主訴:全身の皮疹
  • 現病歴1週間前より体幹に掻痒感を伴う紅斑が出現したため受診.
  • 既往歴,家族歴,生活歴に特記すべき事なし
  • 小児接触歴なし.海外渡航歴なし

身体所見

全身状態良好,血圧 125/70 mmHg, 脈拍 80/分,呼吸数 15/分,SpO2: 98% (room)

  • 頭頚部:眼瞼結膜貧血なし,眼球結膜黄染なし,咽頭発赤 (-),頸部リンパ節腫大 (-)
  • 胸部:呼吸音清,心雑音なし.
  • 腹部:圧痛なし.
  • 四肢:下腿浮腫なし.
  • 皮膚:両前腕・手掌の一部に紅色の丘疹あり.

皮膚所見

皮膚所見

経過

  • 性活動期にある患者の皮疹なので,梅毒の可能性を考え性交渉歴を追加したところ,数ヶ月の間に不特定多数との性交渉があったことが分かった.
  • さらに,性交渉のパートナーは主に男性であった.
  • RPR 128 倍,TPHA 512 倍であり2期梅毒と診断した。
  • アモキシシリン 3g分3、プロベネシド 1500mg分3を 2週間処方し,皮疹は改善した。
  • その他の性感染症スクリー二ング検査は全て陰性だった


梅毒の自然経過


1期梅毒|2期梅毒

検査の解釈


検査の解釈

梅毒血清反応の偽陽性をきたす疾患

非トレポネーマ抗原検査(RPRなど) トレポネーマ抗原検査(TPHAなど)
加齢,妊娠,細菌性心内膜炎,ブルセラ症,軟性下疳,水痘,薬物依存症,肝炎,特発性血小板減少性紫斑病,ワクチン接種,免疫グロブリン異常,伝染性単核球症,静注薬物使用者,ハンセン病,鼠径リンパ肉芽腫症,悪性腫瘍,麻疹,流行性耳下腺炎,肺炎球菌肺炎,ウイルス性肺炎,結節性多発動脈炎,関節リウマチ,リウマチ性心疾患,リケッチア,全身性エリテマトーデス,甲状腺炎,結核,潰瘍性大腸炎,血管炎,ピンタ,Yaws 加齢,妊娠,ブルセラ症,肝硬変,薬物依存症,陰部ヘルペス,高グロブリン血症,ワクチン接種,伝染性単核球症,レプトスピラ症,ハンセン病,ライム病,回帰熱,マラリア,強皮症,全身性エリテマトーデス,甲状腺炎,ピンタ,Yaws

梅毒の治療

梅毒の治療

日本性感染症学会 2016

ベンジルペニシリンバンザチン 1日 120 万単位 分3
アモキシシリン 1日 1500 mg 分3
病期 治療期間
1期梅毒 2 ~ 4 週間
2期梅毒 4 ~ 8 週間
早期潜伏梅毒 (記載なし)
後期潜伏梅毒 8 ~ 12 週間
感染時期不明の潜伏梅毒 8 ~ 12 週間
3期梅毒 8 ~ 12 週間
梅毒治療における アモキシシリン内服治療のエビデンス
  • アモキシシリン1回1gを1日3回+プロベネシド1回500mgを1日3回内服の治療成功率は全体で95.5%.
  • 治療期間は1期・2期・早期潜伏梅毒では2週間.
  • 後期潜伏梅毒、感染時期不明の潜伏梅毒の治療期間は4週間を推奨.

(Tanizaki R, et al. Clin infect Dis 2015;61:177-183)

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