感染症アトラス

一般社団法人日本感染症学会

腸結核

病歴

  • 80代 女性
  • 健康診断で便潜血陽性を指摘され,下部消化管内視鏡目的に紹介となった

下部消化管内視鏡

下部消化管内視鏡

  • 横行結腸のポリープ横に全周性の輪状潰瘍を認めた

内視鏡所見

  • 生検材料の病理所見(HE染色)
    非乾酪性肉芽腫とLanghans型巨細胞を認めた

経過

  • インターフェロンγ遊離試験陽性
  • 喀痰・胃液の結核菌培養陰性
  • 胸部CTでは肺野には異常陰影なし
  • 生検組織の結核菌培養,結核菌PCRにより腸結核と診断した

リファンピシン+イソニアジド+ピラジナミド+エタンブトール
4剤併用療法
治療2か月後の下部消化管内視鏡像

リファンピシン+イソニアジド+ピラジナミド+エタンブトール4剤併用療法治療2か月後の下部消化管内視鏡像

  • 瘢痕を残すのみとなっている(右図)

腸結核の内視鏡的特徴

  • 好発部位は盲腸,次いで上行結腸に多い
  • 特徴的所見:輪状潰瘍
  • びらんや不正形潰瘍など様々な所見を呈する
  • 進行例では,輪状狭窄や広い萎縮性瘢痕を形成する

腸結核の内視鏡的特徴

上行結腸に小潰瘍とびらんを認める

輪状傾向を示す不正形潰瘍を認める

輪状傾向を示す不正形潰瘍を認める

回盲部に輪状潰瘍を認める

回盲部に輪状潰瘍を認める

鑑別診断

  • Crohn病:腸間膜側の縦走潰瘍,非乾酪性肉芽腫
  • 非特異性多発性小腸潰瘍(chronic enteropathy associated with SLCO2A1 ; CEAS)

病理学的特徴

  • 典型例:乾酪性肉芽腫
  • その他:非乾酪性肉芽腫,Ziehl-Neelsen染色による抗酸菌の同定
  • 剖検や手術材料における検討でも乾酪性肉芽種は36-50%にしか認めない
  • 生検材料ではさらに稀である

微生物学的診断

  • 生検組織の結核菌培養,結核菌PCR法
  • 補助診断
    • INF-γ遊離試験:既往感染と最近の感染は区別できない
    • ツベルクリン反応:BCG接種や非結核性抗酸菌の影響により陽性になる

腸結核の治療

  • 肺結核と同様にリファンピシン+イソニアジド+ピラジナミド+エタンブトール(2ヵ月) →リファンピシン+イソニアジド(4ヵ月)を行う
  • 効果判定:内視鏡で潰瘍の消失
  • 判定時期に明らかな根拠はないが,治療2ヵ月後の内視鏡検査による報告が多い

胃と腸 2017;52:202-213

診断的治療

  • 内視鏡所見などの画像診断において腸結核が疑われるが,培養検査や病理検査において確定診断がつかない場合,診断的治療を要することがある

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