感染症アトラス

一般社団法人日本感染症学会

MSSAによる創部感染症に伴うToxic Shock Syndrome(TSS)

病歴

  • 30代 男性
  • 近医で左側頭部の良性腫瘍切除術を施行され、翌日より発熱が出現、術後2日目に四肢~体幹の紅斑、下痢も生じ当科紹介となった。
  • 来院時、血圧低下、頻脈を認めた。
    軽度の結膜充血、血小板減少あり。


身体所見1

  • 左側頭部に3cm大の手術痕及び少量の滲出液、周囲皮膚の軽度発赤・熱感あり。


身体所見2

  • 体幹、四肢にびまん性の紅斑を認めた。


身体所見2

  • 創深部から採取した滲出液のグラム染色ブドウの房状のグラム陽性球菌を多数認めた。

経過

  • S. aureus感染症によるTSSを疑いVCM+ABPC/SBT+CLDMで抗菌薬治療開始。
  • 血圧低下は速やかに改善、皮疹も徐々に消退した。
  • 創部滲出液の培養でMSSAと判明。血液培養は陰性であった。ABPC/SBTで治療継続とした。


身体所見2

  • 入院10日目頃より両手掌、手指に落屑が出現した。
  • MSSAによる創部感染症に伴うToxic Shock Syndrome(TSS)と診断した。

参考:TSSの症例定義 (CDC 2011 より作成 )

臨床基準
  1. 発熱:38.9℃以上
  2. びまん性斑状紅皮症
  3. 落屑:皮疹出現後1~2週間で出現
  4. 低血圧:収縮期血圧90 mmHg以下
  5. 臓器症状:(以下の3つ以上を満たす)
  • 消化器:発症時の嘔吐 or 下痢
  • 筋肉:重度の筋肉痛 or CKが正常上限の2倍以上
  • 粘膜:膣、口腔咽頭、結膜の充血
  • 腎臓:BUN or Crが正常上限の2倍以上 もしくは膿尿(尿路感染症は除外)
  • 肝臓:T-bil or AST or ALTが正常上限の2倍以上
  • 血液:血小板≦10万/μL
  • 中枢神経:巣症状を伴わない見当識障害・意識変容 (発熱・血圧低下がない時)
  •   
検査基準:下記の検査が陰性   
  • 血液培養(S. aureusは陽性となる可能性あり)、髄液培養
  • ロッキー山脈紅斑熱、レプトスピラ症、麻疹の血清学的検査
  •   
症例分類

Coifirmed:検査基準+臨床基準①~⑤全て

Probable:検査基準+臨床基準①~④の4つ

PowerPointファイルのダウンロード

本パワーポイントにつきましては以下の内容に同意の上、ご利用下さい。

  • 本アトラスの利用にあたっては、専門医育成・若手への感染症教育資材としての利用に限定します
  • 本アトラスの版権は一般社団法人日本感染症学会に帰属しており、無断転用・画像の加工は禁止します。
  • 本パワーポイントのデータの一部のみの利用については、許可できません。
必須
このページの先頭へ