日本感染症学会

ガイドライン・提言Guidelines

気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言

最終更新日:2020年12月3日

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 一般社団法人日本感染症学会が中心となり、賛同学会の先生方からのご意見をいただきながら“気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言”をまとめさせていただきました。2016年の「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」の発表を契機に、薬剤耐性菌の抑制に向けた国家プロジェクトが動き出しました。また2017年には厚生労働省から「抗微生物薬適正使用の手引き 第一版」が公表され、具体的な抗菌薬処方、患者・家族への説明に関して解説されています。この手引きの主な対象は基礎疾患のない成人および学童期以上の小児であり、第一選択薬としてのペニシリンの重要性が解説されています。また、“感冒”などのウイルス感染症に対して抗菌薬が無効であること、抗菌薬が必要ないことの患者・家族への説明例まで示されていることが特徴です。一方で、基礎疾患を有する宿主、高齢者・誤嚥合併例などにおいては、ペニシリン以外の抗菌薬投与を考慮しなければいけない症例が多数存在します。そのような宿主に対する処方に関しては、日本感染症学会・日本化学療法学会が発行している感染症治療薬ガイドなどに解説されているところです。このような背景のもと、基礎疾患を有する宿主、日常診療で遭遇する頻度の高い難治例などに対する抗菌薬適正使用に関して本提言にまとめさせていただきました。
 薬剤耐性(AMR)対策アクションプランは、抗菌薬の適正使用に関して我々の目指すべき方向性をはっきりと示しています。抗菌薬を処方するものの責任として、抗菌薬適正使用の重要性を改めて認識しなければいけません。抗菌薬の適正使用は、抗菌薬の処方を減らせばよいというものではありません。抗菌薬を必要とする症例を適切に判断し、必要な症例に対し適切な抗菌薬を適切な量と期間で投与することです。健康な人と基礎疾患を有する宿主では原因菌の種類や頻度も異なります。ウイルス感染症に続発する細菌感染症の頻度が高いことが、基礎疾患を有する宿主、高齢者感染症の特徴の1つと考えておかなければなりません。
 本提言が感染症診療に携わる先生方の参考となることを祈念しております。最後になりましたが、大変お忙しいところ本提言の作成を担当してくださった気道感染症抗菌薬適正使用委員会委員の先生方に改めてお礼を申し上げます。

2019年8月

一般社団法人日本感染症学会
理事長   舘田 一博

賛同学会
公益社団法人日本化学療法学会
一般社団法人日本臨床内科医会
日本小児感染症学会
日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会

 

気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言(感染症学雑誌第93巻5号 p623-42)

正誤表
 

気道感染症の抗菌薬適正使用に関する提言(ダイジェスト版)

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