日本感染症学会

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最終更新日:2019年6月25日

感染防止対策加算に関するアンケートの集計結果

 2012年の診療報酬改定で感染防止対策加算(1および2)が導入されたことはご承知の通りです。また、2018年の診療報酬改定で新たに抗菌薬適正使用支援加算が追加となり、感染症診療および感染対策のあり方がさらに変化することが予想されます。このような背景の中で、日本感染症学会は、2012年診療報酬改定の効果と2018年の追加改定の意義に関してアンケート調査を実施し、619名の会員からご回答をいただきました。その結果の概略を以下にお示しいたします。感染対策に関わる診療報酬改定の効果を継続的にモニターすることにより、臨床現場がかかえる問題点・ニーズを正しく評価し、今後の改定の方向性を考えるデータを集積できればと考えています。
 本アンケート調査にご協力いただいた皆様へ改めてお礼を申し上げます。

一般社団法人日本感染症学会
理事長 舘田 一博

1.回答者の年齢分布

30歳未満:0.6%
30歳代:13.2%
40歳代:33.0%
50歳代:36.2%
60歳以上:17.0%

2.回答者の職種

医師:79.3%
薬剤師:4.7%
看護師:7.3%
検査技師:7.4%
事務職員他:1.3%

3.回答者の感染症専門医の取得状況

取得している 33.9%
取得していない 66.1%

4.回答者のICDの取得状況

取得している 67.7%
取得していない 32.3%

5.回答者の施設のベッド数

回答者の施設のベッド数

6.回答者の施設の分類

回答者の施設の分類

7.回答者の施設予算・人事・経営への関与

大きく関与している 16.2%
少し関与している 33.1%
関与していない 50.7%

8.感染防止対策加算(2012年)の取得状況

感染防止対策加算1を取得 73.9%
感染防止対策加算2を取得 13.7%
取得していない 12.4%

9.感染管理部(感染制御部門)の職種別人数と勤務形態

医師 0人: 0.8% 専従医師 0人: 60.0%
1人: 28.7% 1人: 16.7%
2人: 26.2% 2人: 2.7%
3人: 14.6% 3人: 1.3%
薬剤師 0人: 5.0% 専従薬剤師 0人: 59.6%
1人: 44.4% 1人: 16.3%
2人: 28.9% 2人: 0.8%
3人: 7.9% 3人: 0.2%
看護師 0人: 0.8% 専従看護師 0人: 10.9%
1人: 34.1% 1人: 54.0%
2人: 34.9% 2人: 17.2%
3人: 13.4% 3人: 4.6%
検査技師 0人: 7.5% 専従検査技師 0人: 65.5%
1人: 44.4% 1人: 8.6%
2人: 27.8% 2人: 1.9%
3人: 6.7% 3人: 0.2%

10.感染防止対策加算(2012年)の効果

効果的であった 84.5%
効果的でなかった 4.8%
わからない 10.7%

11.感染防止対策加算(2012年)を取得してからの感染症診療・制御における変化

大変良くなった 28.0%
少し良くなった 60.5%
あまり変わらなかった 11.1%
少し悪くなった 0.4%

12.感染防止対策加算(2012年)を取得してからの変化(複数回答)

感染症診療・制御の質的レベルアップ 58.9%
感染対策に関わる人員状況の改善 53.1%
感染対策に関わるハード面の充実 41.3%
他科との連携の促進 28.0%
病院執行部からの評価 26.2%

13.感染防止対策加算(2012年)以降の人員の増員

あり 51.5%
なし 48.5%

14.感染防止対策加算(2012年)以降の人員の増員

医師 49.8% 専従医師の増加 18.6%
薬剤師 43.0% 専従薬剤師増加 10.8%
看護師 57.0% 専従看護師増加 37.6%

15.2018年の診療報酬改定で、新たに抗菌薬適正使用支援加算が設定されます。この改定で抗菌薬の適正使用が進むと思いますか。

大いに進むと思う 9.4%
少し進むと思う 67.0%
あまり変わらないと思う 18.7%
進まないと思う 2.6%
わからない 2.3%

16.2012年および2018年の診療報酬改訂による加算の使用用途に関して質問します。
今後、加算をどのように使用してほしいと思いますか(2つまで可)。

人員の補充 74.2%
感染対策消耗品に対する費用 56.5%
施設・機器などのハード面の充実 54.9%
耐性菌・遺伝子診断など特殊検査の費用 50.7%
ワクチン費用 29.7%

17.もし1人だけ人員を補充できるとしたらどの職種を希望しますか。

医師 29.9%
看護師 25.4%
薬剤師 22.8%
微生物検査技師 11.0%
事務職員 10.9%

アンケート結果のまとめ

  • 日本感染症学会会員に対してメイル配信によるアンケート調査を実施したところ、619名の方から回答をいただいた(医師 79.3%、感染症専門医 33.9%)。
     
  • 現時点における感染管理部(感染制御部門)の職種別人数と勤務形態において、ほとんどの施設において医師の所属がみられるものの、専従としての医師、薬剤師がみられない施設がいずれも約60%で認められた。一方、看護師においては、約90%の施設において専従の職員1人以上の配置が達成されていた。
     
  • 感染防止対策加算(2012年)を取得してからの感染症診療・制御における変化において、約90%の施設が改善を感じていることが明らかとなった。特に、診療・制御の質的レベルアップおよび人員状況の改善を感じている施設が50%以上あった。
     
  • 感染防止対策加算(2012年)により感染管理部門の医師の増加は約50%の施設でみられたものの、そのうちの専従医師の増加は19%前後にとどまっていた。同様の傾向は薬剤師でもみられており、薬剤師全体の増加は約43%であったものの、専従薬剤師の増加は約11%であった。
     
  • 感染防止対策加算(2018年)の導入により約3/4の回答者が抗菌薬の適正使用が進むと考えていた。
     
  • 感染防止対策加算の使用用途に関して、人員の補充を期待する人が最も多く(74.2%)、次いで消耗品に対する費用(56.5%)、施設・機器などハード面の充実(54.9%)であった。
     
  • 人員の補充に関しては、医師、看護師、薬剤師の順で要望が高いことが明らかとなった。

総括

感染防止対策加算の導入が、本邦における感染制御体制の充実に大きく貢献していることが明らかになった。今後の方向性としては、感染管理部門における専従職員(特に医師・薬剤師)の適正配置の在り方、加算の使用用途に関して引き続き考えていく必要があると思われた。

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