新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の再流行がみられ、毎日のように最高感染者数の更新が報じられています。東京、大阪、名古屋、福岡などの大都市を中心に市中感染と思われる散発例が報告されています。予想されていたより早い時期の再流行に直面する中で、改めてCOVID-19に対する診療および対策の在り方に関して議論が行われているところです。特に11月以降のインフルエンザのシーズンにおけるCOVID-19診療に関しては特別の注意が必要になってくると思われます。
このような背景のもと、日本感染症学会ではインフルエンザ-COVID-19アドホック委員会を立ち上げ “今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて” を作成いたしました。ワーキンググループの委員長をインフルエンザ委員会の委員長である石田 直先生(倉敷中央病院)にお願いし、インフルエンザおよびCOVID-19の専門家を中心に、医師会からも角田 徹先生、釜萢 敏先生にご参加いただき、開業医の視点を取り入れながらご議論いただきました。特に検査の進め方に関しては、両感染症の鑑別を第一とする原則を重視しながらも、流行状況や感染者との接触、あるいは特徴的な臨床症状を考え、強く疑う感染症の検査を優先する考え方も提唱されています。COVID-19に対する検査キットのキャパシティーを考慮しながら、臨床現場の実情にあった、医療の混乱を防ぐ診療の在り方に関して提案しております。
大変お忙しいところ短期間の間に本提言をまとめてくださったアドホック委員の先生方に改めて感謝申し上げます。本提言は7月時点での情報をもとに作成しておりますので、検査法に関する新しい技術やエビデンスの発表を受けて適宜改訂されることをご理解いただければ幸いです。本提言がCOVID-19および疑い患者を診療する臨床現場の方々のお役に立つことを祈念しております。引き続き感染症診療、研究および教育にご理解とご協力をお願いいたします。
2020年8月3日
一般社団法人 日本感染症学会
理事長 舘田 一博