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日本結核・非結核性抗酸菌症学会、日本呼吸器学会、 日本感染症学会、日本化学療法学会 合同声明文:エタンブトール錠の国内供給に不足が生じる可能性について

最終更新日:2023年4月4日

 この度、抗結核薬、抗抗酸菌症薬(肺結核及びその他の結核症、マイコバクテリウム・アビウ ムコンプレックス(MAC)症を含む非結核性抗酸菌症)として保険適用されておりますエタンブトールの販売が、国内シェアの約50%を占めるサンド社の国外生産ライン上の問題から、5月下旬まで同社の生産が止まること、復旧の見通しの目途が5月の末となること、が、同社から報告されました。現在、サンド社では250mg錠、125㎎錠のいずれも生産が中止されております。本薬剤は、抗結核薬として感染症法の下、公費負担の対象として用いる薬剤であると同時に、患者数が増加傾向にあるMycobacterium avium / intracellulare症をはじめとする非結核性抗酸菌症の治療薬です。国内では科研製薬においても生産されておりますが、急な事態でありますので不足する50%を補うことが可能であるほど生産されるかは不透明な状況です。 

 この事態を憂慮し、この度、日本結核・非結核性抗酸菌症学会、日本呼吸器学会、日本感染症学会、日本化学療法学会では、処方をされる医師の皆様へ、メッセージを発信いたすこととしました。

 第一に、エタンブトールを過剰に購入されることはお控えください。また、薬剤を卸す企業の方に、自施設に優先してエタンブトールを納品するように強いることも、医療の公平性の観点からお控えいただくようお願いいたします。

 第二に、代替薬剤については以下の通りとなります。

 エタンブトールは、抗結核薬として一次抗結核薬に属しております。結核標準治療の代替薬として、同じ一次結核薬に属すストレプトマイシンが使用可能です。また、結核標準治療の代替薬としては結核医療の基準に記載されておりませんが、効果および有害事象の点から二次抗結核薬であるレボフロキサシンへの代替が許容されると考えられます。ストレプトマイシンは筋肉注射であること、2薬剤とも各薬剤特有の副作用があること、薬剤耐性が数%見込まれることから、代替をせざるを得なくなった場合に投与法に不安がある医師の方は、専門医へのコンサルテーションをお願いいたします。

 非結核性抗酸菌症に対する投与につきましては、残念ながら代替薬はありません。特にMycobacterium avium / intracellulare症ではマクロライド系薬剤(クラリスロマイシン、アジスロマイシン)の効果を高め、その耐性化を抑止する作用を有するため、リファマイシン系薬剤(リファンピシン、リファブチン)やアミノグリコシド系薬剤(ストレプトマイシン、アミカシン)を併用しても十分な治療効果を期待できない可能性があります。

 非結核性抗酸菌症患者さんへのエタンブトールの投与にあたりましては、以下の諸点につきまして医師の皆様にご留意いただくようお願い申し上げます。

  1. 患者さんがご自宅にお持ちの余剰のエタンブトールの有無をご確認いただき、もし余剰があるようでしたら、先にそちらから内服していただくよう、指導と処方の調整をお願いいたします。
  2. 今後の処方につきましては、患者さんのご協力が得られる場合には、格別の事由がなければ長期処方をお控えいただき、全ての患者さんにエタンブトールが間断なくゆきわたるよう、ご協力をお願いいたします。
  3. 特に、Mycobacterium avium / intracellulare症では、マクロライド系薬剤(クラリスロマイシン、アジスロマイシン)から1薬、エタンブトール、リファマイシン系薬剤(リファンピシン、リファブチン)から1薬、による、3薬剤併用が標準となりますが、エタンブトールを欠く処方では、有効性が低下する可能性があること、key drugであるマクロライド系薬剤への耐性が生じる可能性があること、から、治療開始をお待ちいただけるご病状の患者さんには、安定供給が見込まれてからの開始をお願い申し上げます。

 今後もサンド社から安定供給に向けて情報共有をはかり、医師の皆様に発信してまいります。ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

2023年4月3日

日本結核・非結核性抗酸菌症学会 理事長 礒部 威
日本呼吸器学会         理事長 平井豊博
日本感染症学会         理事長 四柳 宏
日本化学療法学会        理事長 松本哲哉

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