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震災時に問題となる感染症―避難所・災害現場で注意すべき感染症とその対応―

最終更新日:2026年8月18日NEW

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震災時に問題となる感染症―避難所・災害現場で注意すべき感染症とその対応―

目次

目次
はじめに
I. 災害時に危険が増加する感染症(外傷・環境曝露)
II. 避難生活時に問題となる感染症
III. 暑い時期に問題となりやすい感染症
IV. 寒い時期に問題となりやすい感染症
V. 症候別鑑別診断
VI. 疾患各論
VII. 現場対応チェックリスト(初動)
VIII. 避難所における環境衛生対策(実践編)
IX. 夏期・停電・断水時の対応(食中毒対策を中心に)
X. ワクチン接種・予防のポイント
XI. 作成にあたって・参考文献

はじめに

本資料は、2011年3月に日本感染症学会が公表した「東日本大震災―地震・津波後に問題となる感染症―Version 2」を基に、その後の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行と知見を踏まえて内容を見直し、現場で活用しやすい実践的な構成に改めたものです。

大規模な地震・津波などの災害発生後、避難所や被災地で医療・支援にあたる方々(感染症を専門としない方を含む)が、限られた情報と資源の中でも初期対応の判断に役立てられるよう、疑うべき感染症、症候からの鑑別、初期対応の要点、避難所の環境衛生対策、夏期の停電・断水時の対応(食中毒対策を含む)、予防(ワクチン等)のポイントを整理しました。

地域や季節によって実際の発生頻度は異なりますが、避難生活の長期化や集団生活という特殊な状況を踏まえ、注意すべき疾患を幅広く記載しています。なお、頻度が特に低いと考えられる一部の疾患(レプトスピラ症、ハンタウイルス症、発疹チフス、つつが虫病、腸チフス・パラチフス等)は、近年の国内における発生状況を踏まえ、本版では割愛しています。

本資料は情報提供を目的としたものであり、個々の患者の診断・治療については必ず医療専門家にご相談ください。

I. 災害時に危険が増加する感染症(外傷・環境曝露)

外傷や汚染水への曝露に伴い、平時より発生頻度・重症度が高まる感染症です。

  • 外傷後の創部感染
  • 破傷風
  • 汚染水の曝露による感染(レジオネラ肺炎、レプトスピラ症等を含む)

II. 避難生活時に問題となる感染症

集団生活の長期化に伴い、以下のような感染症に特に注意が必要です。感染対策上は感染経路別に対応が異なりますので、それに見合った感染対策を実施してください。

飛沫またはエアロゾルによる感染:

  • インフルエンザ
  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
  • 肺炎球菌性肺炎
  • マイコプラズマ肺炎
  • 百日咳

経口感染:

  • 感染性下痢症(細菌性・ウイルス性)
  • 食中毒

接触感染:

  • 黄色ブドウ球菌感染症
  • A群連鎖球菌感染症
  • 疥癬

空気感染:

  • 結核
  • 麻疹
  • 水痘

III. 暑い時期に問題となりやすい感染症

夏期の被災では、高温・多湿と停電・断水が重なり、食品や水、皮膚を介した感染症のリスクが高まります。

食品・水を介するもの:

  • 感染性下痢症・食中毒(腸管出血性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌、ウエルシュ菌、セレウス菌、ビブリオ属細菌など)

水系・エアロゾルを介するもの:

  • レジオネラ肺炎(仮設シャワー・散水・停滞水)
  • 汚染水の誤嚥による肺炎

皮膚・接触によるもの:

  • とびひ(伝染性膿痂疹)、毛包炎などの皮膚化膿性感染症
  • 白癬(足白癬・体部白癬)、あせもに続発する皮膚感染

外傷に伴うもの:

  • 創部感染(復旧・がれき撤去作業)
  • 破傷風

昆虫媒介:

  • 蚊媒介感染症(日本脳炎、等)

小児に多い夏の感染症:

  • 手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱(プール熱)

IV. 寒い時期に問題となりやすい感染症

冬期は屋内での密集と乾燥・低換気により、呼吸器感染症と感染性胃腸炎が集団発生しやすくなります。

呼吸器感染症:

  • インフルエンザ
  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
  • RSウイルス感染症(乳幼児・高齢者)
  • ヒトメタニューモウイルス感染症
  • 肺炎球菌性肺炎
  • マイコプラズマ肺炎
  • 百日咳
  • A群連鎖球菌性咽頭炎

感染性胃腸炎:

  • ノロウイルス感染症
  • ロタウイルス感染症

V. 症候別鑑別診断

避難所という特殊な状況を踏まえ、鑑別診断に加えておきたい感染症を症候別にまとめました。
症状のみで診断することは困難ですが、疑わしい感染者を早く見つけて、受診や検査に繋げる一助として参考にしてください。

  • インフルエンザ、COVID-19、その他のウイルス性上気道炎
  • 結核(二週間以上続く咳と痰)
  • マイコプラズマ(痰を伴わないしつこい咳が続く)
  • 百日咳(長期間続く激しい咳、ヒューと音を立てて吸い込む)

発熱+全身倦怠感

  • COVID-19(発熱、咳、咽頭痛、倦怠感など症状は多彩)
  • インフルエンザ(急激な発熱、関節痛・筋肉痛が特徴)

消化器症状

  • 大腸菌(腸管出血性大腸菌は主に牛肉が感染源、血便が認められる)
  • サルモネラ(主に鶏肉が感染源、小児・高齢者における重症化に注意)
  • カンピロバクター(主に鶏肉が感染源、血便が認められる)
  • 黄色ブドウ球菌(飲食後短時間で嘔吐、腹痛、発熱なし)
  • ノロウイルス(水様便、嘔吐、感染性が高く汚染環境からも感染しやすい)
  • ロタウイルス(乳児にみられる白色便性下痢症)

皮膚症状

  • 黄色ブドウ球菌(いわゆる“とびひ”)
  • A群連鎖球菌(小児の咽頭炎、稀に劇症型感染を引き起こす)
  • 麻疹(高熱、結膜充血、皮疹)
  • 帯状疱疹(神経走行に沿った皮疹、強い痛み)
  • 疥癬(強いかゆみ、皮下トンネル形成が特徴)

VI. 疾患各論

それぞれの疾患について、原因病原体・臨床的特徴・初期対応/治療・注意点を整理しています。抗菌薬の選択などは自施設の状況や耐性菌の動向も踏まえてご判断ください。

外傷後の創部感染

原因病原体 黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、腸内細菌など
初期対応・治療 基本的には創部洗浄で対応する。抗菌薬を使用する場合はペニシリン・βラクタマーゼ阻害剤あるいは第一世代セフェム剤などを推奨。
注意点 泥水などによる汚染がある場合は腸内細菌、ビブリオ、エロモナスなどによる感染のリスクが高まる。この場合、第二・三世代セフェム系薬、フルオロキノロン系薬の投与を考慮する。
破傷風の可能性がある場合は、それに適した対応を行う。

破傷風

原因病原体 破傷風菌
臨床的特徴 神経毒素による強直性痙攣が特徴。潜伏期間は3~28日。開口障害、嚥下困難、痙笑などから始まり、呼吸困難や後弓反張に進展する。臨床症状から疑った場合は速やかに治療を開始する。
初期対応・治療 感染部位の十分な洗浄とデブリードマン(予防・治療)。ペニシリン系薬が推奨される。リスクが高い症例にはトキソイドワクチン接種(発症予防目的、可能であれば3回接種)。抗破傷風ヒト免疫グロブリン製剤が利用可能。
注意点 明らかな外傷がなくても発症することがある。日本では1968年(昭和43年)に破傷風を含むワクチンが定期接種化されたため、それ以前に生まれた世代は基礎免疫を持たないことがほとんどで、感受性が高いことに注意する(受傷時の対応はX-2を参照)。
がれき除去などの作業をする場合には素手で行わないことが重要である。

ガス壊疽

原因病原体 ガス壊疽菌
臨床的特徴 組織内の嫌気状態で増殖し毒素を産生することにより発症。潜伏期間は8時間~20日(平均4日前後)。皮下組織におけるガス産生、激痛、水疱形成が特徴で、筋肉壊死が急激に進行し高率にショックを合併する。
初期対応・治療 感染部位の開放と十分な洗浄・デブリードマン。ペニシリン系薬が有効。ガス壊疽抗毒素製剤が利用可能(詳細は専門医に相談)。症例によっては病変部の切断を考慮する。
注意点 ガス壊疽菌は酸素に弱いため過酸化水素水による消毒、高圧酸素療法などが有効。重症例で他の病原体が否定できない場合はカルバペネム系薬などの広域抗菌薬投与も考慮。破傷風菌との混合感染に注意。

汚染水の誤嚥による肺炎

原因病原体 口腔内細菌、嫌気性菌に加え腸内細菌、緑膿菌、ビブリオ属など
臨床的特徴 津波等が発生した場合、吸引した菌の種類と菌量により潜伏期・症状は多彩。腸内細菌や緑膿菌などのグラム陰性菌が原因の場合は、壊死性あるいは出血性肺炎を示す頻度が高い。
初期対応・治療 ペニシリン・セフェムあるいはフルオロキノロン系薬で治療を開始する。嫌気性菌の関与が強い場合はクリンダマイシン併用、カルバペネム系薬の使用も考慮。
注意点 好気性・嫌気性菌など混合感染の頻度が高いことに注意。発症から4~7日後に生じるβラクタム剤が無効の重症肺炎の場合はレジオネラ肺炎も鑑別に加える。

レジオネラ肺炎

原因病原体 レジオネラ属菌
臨床的特徴 本菌で汚染された水の誤嚥・エアロゾルの吸入および土壌粉塵の吸入により発症。潜伏期は4~10日。冷却塔・噴水・河川など自然界の水系・土壌に広く存在する。βラクタム剤・アミノグリコシド剤に反応しない肺炎で、多発性陰影、強い低酸素血症、意識障害、肝酵素異常などを呈する。高齢者に多く、無治療での死亡率は20%以上とされる。
初期対応・治療 フルオロキノロン系薬、マクロライド系薬による治療。
注意点 尿中抗原検査が可能であるが、診断できるのはレジオネラ肺炎の半数前後にとどまる。陰性であっても完全には否定できないことに注意する。
レジオネラ肺炎は人から人への感染はみられない。

インフルエンザ

原因病原体 インフルエンザウイルス
臨床的特徴 急激な発熱、頭痛、関節痛・筋肉痛、倦怠感で発症し、咳・咽頭痛などの上気道症状を伴う。避難所など集団生活の場では飛沫感染により急速に拡大しうる。
初期対応・治療 症状などからインフルエンザが疑わしい場合、迅速検査キットが利用でき、かつ抗インフルエンザ薬の投与も可能な状況であれば、薬剤の効果が期待できる発症後48時間以内の投与を目指す。特に重症化のリスク因子を有する場合は積極的に投与を検討する。検査キットや抗インフルエンザ薬が利用できない状況では、対症療法で対応する。
注意点 手洗い、咳エチケットの徹底が基本。目などの粘膜を介した感染の可能性にも注意する。COVID-19との症状の重なりが大きく、必要に応じて検査での鑑別を行う。患者に濃厚接触した場合などに抗インフルエンザ薬による予防投与が可能であるが、対象者全例に行うべきものではなく、ケースバイケースで判断する。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

原因病原体 SARS-CoV-2
臨床的特徴 潜伏期は概ね2~5日(最大10日程度)。発熱、咳、咽頭痛、倦怠感、頭痛、味覚・嗅覚障害など症状は多彩。高齢者や心血管疾患・糖尿病・慢性呼吸器疾患などの基礎疾患を有する場合は肺炎・重症化のリスクが高い。2023年5月8日以降、感染症法上の位置付けは5類感染症。
初期対応・治療 軽症例では対症療法(解熱鎮痛薬、十分な水分・休養)が基本。重症化リスクの高い患者には、発症からできるだけ早期の経口抗ウイルス薬(ニルマトレルビル/リトナビル、モルヌピラビル、エンシトレルビルなど)投与を考慮する(目安として5日以内、エンシトレルビルは72時間以内)。呼吸状態が悪化する例は速やかに医療機関へ搬送する。
注意点 発症後5日間は外出を控え、症状軽快後1日を経過するまでは個室等での療養が望ましいとされる。避難所は密になりやすく、陽性者が出ると急速に感染が拡大しうるため、疑い例は早期に保護・ゾーニングし、換気・手指衛生・マスク着用を徹底する。ワクチン接種歴を確認し、未接種の高リスク者には接種機会の提供を検討する。また2026年3月、エンシトレルビルについてCOVID-19の曝露後発症予防を目的とした効能・効果が国内で追加承認された。避難所で陽性者が発生し、同室・同居の濃厚接触者に重症化リスク因子を有する者がいる場合には、予防投与も選択肢となりうるが、妊婦は対象外で、併用禁忌・併用注意薬もあるため、適応は慎重に判断する。

肺炎球菌性肺炎

原因病原体 肺炎球菌
臨床的特徴 典型的には“大葉性肺炎”、“鉄さび色の痰”が特徴。敗血症、髄膜炎、関節炎など転移性病変の合併率が高い。
初期対応・治療 ペニシリン・セフェム系薬、あるいはレスピラトリーキノロンが有効。
注意点 避難所では高齢者~小児間の飛沫感染が頻発する可能性がある。高齢者・基礎疾患保有者はワクチン接種歴の確認が望ましい。成人用の肺炎球菌ワクチンには、莢膜ポリサッカライド(多糖体)ワクチンと結合型ワクチンの2種類がある。2026年4月から高齢者の定期接種に用いるワクチンは、従来の23価莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23、ニューモバックスNP)から20価結合型ワクチン(PCV20、プレベナー20)に変更され、定期接種として使用できるのはPCV20のみとなった。任意接種としては21価結合型ワクチン(PCV21、キャップバックス)も使用できる。接種歴により推奨される種類・間隔が異なるため、日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会の合同ステートメント「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方」を参照。

マイコプラズマ症

原因病原体 マイコプラズマ
臨床的特徴 “痰を伴わない頑固な咳”が特徴。“Walking pneumonia”(歩く肺炎)とも表現され、重篤な肺炎を伴う例は少ない。
初期対応・治療 マクロライド系、フルオロキノロン系、テトラサイクリン系薬が有効だが、最近ではマクロライド耐性マイコプラズマの割合が増加している。
注意点 避難所内で飛沫感染により蔓延する可能性がある。長引く咳を示す患者をみたらマイコプラズマ、百日咳、結核を鑑別に加える。

百日咳

原因病原体 百日咳菌
臨床的特徴 潜伏期は約1週間。カタル期→痙咳期(咳発作期)→回復期の経過をたどる。1~2週間のカタル期(咳、痰、鼻水、微熱などのかぜ症状)ののち、痙咳期(激しい発作性の咳:whooping cough)が1~6週間持続する。
初期対応・治療 マクロライド系薬が有効。ただしマクロライド耐性の百日咳菌が増加している。
注意点 感染力が強く、避難所内で飛沫感染により蔓延する可能性がある。1歳未満では重症化傾向が強いことに注意。手洗い・咳エチケットの徹底が原則で、ワクチン接種者においても感染しうる。

感染性下痢症・食中毒(細菌)

原因病原体 大腸菌、サルモネラ、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌、ビブリオ属細菌、ボツリヌス菌、セレウス菌、ウエルシュ菌など
臨床的特徴 ・腸管出血性大腸菌:“All blood, no stool”と形容される鮮血便、強い腹痛が特徴的。糞口感染で感染性が極めて高い。抗菌薬投与は毒素放出を促す可能性があり慎重に検討する。
・サルモネラ:原因食材は鶏肉・卵(卵内感染例あり)。小児・高齢者の重症例に抗菌薬を用いる場合はキノロン系薬、アンピシリン、ホスホマイシンなどが推奨される。
・カンピロバクター:原因食材は加熱不十分な鶏肉(特に肝臓)。抗菌薬を用いる場合はマクロライド剤が第一選択。
・ビブリオ属細菌:原因食材は魚介類。肝硬変等の基礎疾患を有する宿主が汚染食材を摂取すると急激に敗血症を発症しうる(V. vulnificusなど)。
・黄色ブドウ球菌:耐熱性毒素による食中毒。傷の化膿創から高率に分離される。“おにぎり”など食材を介した感染に注意。摂食後3~6時間で発症し、水様下痢や発熱が無いことが特徴。
・ボツリヌス菌:“いずし”など嫌気状態で保存される食材が原因。筋肉の弛緩性麻痺が特徴(めまい、眼瞼下垂、複視、嚥下困難、呼吸筋麻痺等)。乳児では蜂蜜摂食による乳児ボツリヌス症に注意。
初期対応・治療 基本的には対症療法。脱水に十分注意する。小児・高齢者・肝障害患者などリスク因子を有する宿主や重症例には抗菌薬投与を考慮する。
注意点 避難所内でのトイレ環境の維持、手洗いの徹底が基本となる。夏期は気温上昇により食品中で菌が急速に増殖するため、停電で冷蔵・保冷ができない状況では特に注意を要する(詳細はIX-1を参照)。

ノロウイルス感染症

原因病原体 ノロウイルス
臨床的特徴 冬季に流行しやすい。嘔気、嘔吐、下痢、発熱。潜伏期は1~3日。ノロウイルスは最も頻度の高い食中毒原因病原体で、原因食材としてはカキなどの二枚貝類が重要。
初期対応・治療 対症療法(水分摂取・補液)が基本。嘔吐による窒息に注意する。
注意点 感染性が極めて強い。糞便だけでなく乾燥した吐物や便から浮遊するウイルスによる吸入感染の可能性もある。アルコール消毒は無効で、次亜塩素酸製剤による消毒が効果的。

皮膚感染症(黄色ブドウ球菌・A群連鎖球菌)

原因病原体 黄色ブドウ球菌、A群連鎖球菌など
臨床的特徴 小児の“とびひ”の原因として重要。接触感染によりヒト―ヒト伝播する。
初期対応・治療 基本的には消毒で対処する。必要に応じてペニシリン系、第一世代セフェム系薬を投与する。
注意点 汚染水の関与が疑われる場合は腸内細菌やエロモナス属、緑膿菌などの関与も考慮する。市中感染型MRSAの増加が報告されており、この場合ペニシリン・セフェム系薬などのβラクタム剤は無効のことが多い。マクロライド系、フルオロキノロン系、テトラサイクリン系薬が有効。

疥癬

原因病原体 ヒゼンダニ
臨床的特徴 疥癬虫が角質内に侵入し、表皮角質層にトンネルを掘り棲息する。強いかゆみを特徴とし、腹部・腋窩・大腿部の紅色小丘疹、外陰部の赤褐色の小結節、手指の小水疱がみられる。ヒト―ヒトの密接な接触により感染伝播し、虫卵を含むフケ、リネン、医療器具などを介して広がる。
初期対応・治療 下着、寝具などの熱処理(50℃、10分程度)。対症療法およびイベルメクチン内服など。
注意点 ノルウェー疥癬はさらに感染性が強く、牡蠣殻状の厚い鱗屑を特徴とする。

結核

原因病原体 結核菌
臨床的特徴 持続する咳、微熱、食欲低下、体重減少などの非特異的症状。2週間以上持続する咳がみられた場合は結核、マイコプラズマ、百日咳を鑑別に加える(特に高齢者では結核の否定が重要)。感染力は極めて強い(空気感染)。
初期対応・治療 疑わしい症例には喀痰塗抹検査、可能であれば遺伝子検査を実施する。陽性例は陰圧隔離ができる施設へ移送する。
注意点 避難所内で生活する高齢者の結核に注意する。排菌陽性例が1例でもみられた場合は、避難施設内の高齢者・小児に感染が伝播している可能性を考えて対応する。

麻疹

原因病原体 麻疹ウイルス
臨床的特徴 潜伏期10~21日。発熱3日で一旦解熱しコプリック斑が出現、4日目から高熱(39℃以上)と発疹が出現する。発熱2日前~発疹の痂皮化まで感染力があり、感染力は極めて強い(空気感染)。
初期対応・治療 対症療法。年長児・成人は重症化する例もある。曝露後72時間以内の生ワクチン接種は発症予防としても効果が期待できる。
注意点 ワクチン接種歴の確認と未接種児へのワクチン接種を検討する。避難所内での感染制御は困難であり、感染者の早期発見と移送・隔離が重要である。

水痘

原因病原体 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の初感染
臨床的特徴 潜伏期は10~21日。発熱とともに、丘疹→水疱→膿疱→痂皮と進行する発疹が全身に出現し、新旧の皮疹が混在するのが特徴。発疹出現の1~2日前からすべての水疱が痂皮化するまで感染力があり、空気感染・飛沫感染・接触感染のいずれでも伝播する。感染力は極めて強い。成人や免疫不全者では肺炎・脳炎などを合併し重症化しやすい。
初期対応・治療 対症療法と水分摂取が基本。重症化リスクのある例ではアシクロビル等の抗ウイルス薬を投与する。すべての水疱が痂皮化するまで隔離する。曝露後72時間以内(遅くとも5日以内)の生ワクチン接種は発症予防・軽症化に有効。ワクチンが接種できない場合はアシクロビル等の予防内服(接触後7日目から5~7日間)を検討する。
注意点 避難所内での感染制御は困難であり、疑い例の早期発見と隔離・移送が重要である。未罹患の成人、妊婦、免疫不全者への曝露は特に問題となる。ワクチン接種歴・罹患歴を確認し、未接種児への接種を検討する。

帯状疱疹

原因病原体 神経節に潜伏した水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化
臨床的特徴 加齢、疲労、ストレス、低栄養、免疫低下などを契機に再活性化して発症する。片側の神経走行(デルマトーム)に沿った帯状の紅斑・水疱と、皮疹に先行する強い疼痛が特徴。三叉神経第1枝領域では角膜炎・視力障害、顔面神経領域ではRamsay Hunt症候群(顔面神経麻痺、耳痛、難聴)を生じうる。皮疹が治癒した後も帯状疱疹後神経痛が残ることがある。避難生活によるストレス・睡眠不足・低栄養は発症の誘因となる。
初期対応・治療 皮疹出現から72時間以内を目安に、できるだけ早期に抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、アメナメビル等)を開始する。疼痛管理を併せて行う。眼部・顔面の病変、汎発疹、免疫不全例は速やかに専門医へ紹介する。
注意点 水疱内にはウイルスが存在し、接触感染により未罹患・未接種者に水痘を起こしうる(帯状疱疹として伝播するわけではない)。皮疹をガーゼ等で覆い、痂皮化するまで乳幼児・妊婦・免疫不全者との接触を避ける。汎発性帯状疱疹では空気感染に準じた対応が必要である。50歳以上では帯状疱疹ワクチンによる予防が可能で、高齢者を対象とした定期接種の対象にもなっている。

VII. 現場対応チェックリスト(初動)

避難所の管理を行う上で実施したい基本対応です。全項目を一度に満たす必要はありませんが、目安としてご活用ください。

1.有症状者の把握と初期対応

  • 発熱・咳・下痢・皮疹などの有症状者を早期に把握し、発症日・人数・発生エリアを記録する。
  • 1日1回以上の健康観察(体温・症状の確認)を行い、有症状者を早期に把握する。
  • 感染症が疑われる人はなるべく他の人と離れた場所に移動する。個室確保が難しい場合はパーティション等で飛沫を遮断する。
  • 有症状者を療養させる予備スペース(療養区画)と、可能であれば専用トイレを確保する。

2.保健所・医療機関との連携

  • 類似した症状が多く発生するなど集団感染が疑われる場合は、早期に保健所と情報共有し、医療機関に相談する。

3.手指衛生・環境衛生

  • 手指衛生(石けん・流水、アルコール含有擦式消毒液)の設置場所を確保する。
  • 手指衛生を促すポスター等を掲示する。
  • 下痢を認める方のトイレはなるべく専有化するか、使用後の便座等の消毒を行う。
  • トイレ・手洗い場・共用部の清掃担当と頻度を決め、実施記録を残す。
  • 嘔吐物・下痢便の処理キット(次亜塩素酸ナトリウム、使い捨て手袋・エプロン・マスク、ペーパー等)を準備し、処理手順を担当者に周知する。
  • ごみ・汚物の集積場所を居住スペースから離し、密閉して管理する。

4.空間・換気・生活環境

  • マスク着用・咳エチケットを呼びかける(有症状者は特に徹底)。
  • 換気を確保する(30分に1回以上、数分間の対角線換気。可能であれば窓を少し開けて常時換気)。
  • 寝床は可能な限り間隔を空け、頭の向きを互い違いにするなど飛沫を避ける配置とする。
  • ペット同伴者の居住スペースと動物の排泄物処理場所を、居住区・調理区から分けて設定する。

5.食事・配食

  • 調理・配食に関わる人の健康状態(下痢・嘔吐・発熱、手指の傷)を作業前に毎回確認する。

6.高リスク者とワクチン

  • 高齢者・乳幼児・妊婦・基礎疾患保有者などの高リスク者を把握し、優先的に配慮する。
  • インフルエンザ・COVID-19・肺炎球菌・破傷風などのワクチン接種歴を確認する。

7.物品・運営体制・記録

  • 感染対策上必要な物品(石けん、アルコール含有擦式消毒液、マスク、体温計等)の在庫状況を把握しておく。
  • ボランティア・支援者の出入り(氏名・連絡先・日付)を記録し、感染経路調査に備える。
  • 感染対策の情報は掲示や声かけで繰り返し伝える(外国人・高齢者・障害のある人にも伝わる方法を工夫する)

VIII. 避難所における環境衛生対策(実践編)

1.空間・スペースの工夫

  • 体育館・公民館等の大規模空間:高リスク者(高齢者、乳幼児等)と健常者が共存するため、互いに声をかけ合い異変に気づく体制をつくる。
  • プライバシーに配慮するとともに、飛沫等を遮断できる仕切りの設置を行う。
  • 人が密集する場合は、人と人との距離を1~2m以上保ち、有症状者はマスク等で飛沫を防ぐ。
  • 水回り(トイレ・台所・風呂・洗面所):共用頻度が高く、感染性胃腸炎のリスクが高まる。
  • ごみ・汚物処理:居住スペースから離れた場所に設置し、飛散しないようビニール袋等で密閉する。

2.換気・温湿度管理

  • 少なくとも30分に1回以上、数分間、対面・対角線方向の窓を開けて換気する。可能であれば窓を少しだけ常時開けておく。
  • 室温は18~28℃、相対湿度は40~70%(感染防止の観点では40~60%)を目安に管理する。
  • 可能であれば室内のCO2濃度を複数箇所で測定し、概ね1000ppm以下を目安に管理する。

3.手指衛生・環境消毒

  • 石けんによる手洗いとアルコール手指消毒を徹底する。
  • トイレは蓋を閉めてから汚物を流す。
  • 下痢等の有症状者が使用した後は、便座・便蓋をアルコールや塩素系消毒剤等で清拭する。
  • 感染者が確認された場合は健常者と物理的に分離する(個室が望ましいが、困難な場合は飛沫を遮断できる仕切りを設ける)。

IX. 夏期・停電・断水時の対応(食中毒対策を中心に)

夏期の災害では、高温に加えて停電・断水が重なることで、食中毒や脱水、皮膚感染症のリスクが大きく高まります。冷蔵・冷房・水道が使えない状況を前提に、避難所や在宅避難で実施できる対応をまとめました。

1.夏期の高温・停電時の食品衛生(食中毒対策)

(1)基本の考え方

  • 食中毒予防の3原則は「つけない(清潔)」「増やさない(迅速・冷却)」「やっつける(加熱)」。
  • 高温下では細菌が短時間で増える。調理・配布から食べるまでをなるべく短時間にする。
  • 食中毒菌は見た目・におい・味を変えない。五感で判断せず、迷ったら食べない。

(2)停電時の食品の保存

  • 冷蔵庫は扉を開けない(保冷の目安は約4時間)。開閉は最小限にする。
  • 保冷剤・氷・クーラーボックスを活用する。
  • レトルト・缶詰・個包装など常温保存できる食品を優先する。開封後は早めに食べきる。

(3)廃棄の目安

  • 常温で長時間置かれた弁当・おにぎり・調理済み食品は廃棄する。
  • 10℃以上で管理された生鮮食品・乳製品は廃棄する。

(4)調理・配食時の注意

  • おにぎりや惣菜を素手で扱わない(使い捨て手袋・ラップを使用)。
  • 手指に切り傷・化膿した傷がある人、下痢・嘔吐・発熱のある人は調理・配食に関わらない。
  • 加熱は中心部75℃で1分以上(ノロウイルス対策では85~90℃で90秒以上)。
  • カレー・シチューなどの大量調理品を鍋のまま常温放置しない(ウエルシュ菌)。小分けにして早く冷まし、食べる前に再加熱する。
  • 生肉・生魚を扱った手や器具からの二次汚染を防ぐ。まな板・包丁が洗えない場合はラップや使い捨てシートを敷く。
  • 生肉・生魚など加熱していない食品は避ける。

(5)支援物資・配給食の扱い

  • 食事は受け取ったらすぐに食べる。
  • 室温での取り置き・翌日への繰り越しはしない。

(6)飲み水

  • 給水車の水やペットボトル水など、安全が確認されたものを使う。
  • 井戸水・湧水・河川水は飲用・調理・食器洗いに使わない(やむを得ない場合は1分以上煮沸する)。

2.断水時の手指衛生・トイレ・食器の取り扱い

(1)手指衛生

  • 手洗いができないときはアルコール手指消毒を活用する。
  • 目に見える汚れがある場合はウェットティッシュで汚れを拭き取ってから消毒し、水が使えるようになったら流水と石けんで洗う。
  • 少量の水で洗う工夫をする(ペットボトルのキャップに小さな穴を開ける、給水タンクのコックを使うなど)。ためた水に手を浸す方法は汚染を広げるため避ける。
  • 調理・配食時は使い捨て手袋を使用し、適宜交換する。

(2)食器・調理器具

  • 食器はラップやポリ袋をかぶせて使い、使用後は覆いだけを捨てる。
  • 使い捨て食器を活用し、洗浄に貴重な水を使わない。

(3)トイレ

  • 断水中は水洗トイレを使用しない(掲示をし、携帯トイレ・簡易トイレ(凝固剤付き)を使用する。
  • 汚物はビニール袋を二重にして口を固く縛り、指定した場所に密閉して保管する。
  • トイレの後は必ず手指消毒を行う。
  • 便座・レバー・ドアノブなど手が触れる箇所は、次亜塩素酸ナトリウム液(0.05~0.1%)またはアルコールで定期的に清拭する。嘔吐物・下痢便の処理には次亜塩素酸ナトリウム液を用いる。

(4)生活用水と断水解消後の注意

  • プール水・雨水・河川水などの生活用水は、トイレ洗浄など限られた用途にとどめ、飲用・手洗い・食器洗い・歯みがきには使わない。
  • 断水が解消した直後の水道水は、しばらく流してから使用する(滞留した配管内の水で菌が増殖している可能性がある)。

3.夏期の暑熱下での体調管理と環境対策

(1)熱中症と脱水

  • 高温下では熱中症と感染症による発熱の区別が難しいため、どちらの可能性も考慮する。
  • 下痢・嘔吐があると脱水が急速に進む。経口補水液を少量ずつ頻回に摂取する。高齢者・乳幼児は特に注意する。

(2)停電下の暑さ対策と換気

  • 冷房が使えない場合でも、換気は感染対策上考慮する。
  • 日射を遮り、通風・送風と組み合わせて、換気と暑さ対策を両立させる。

(3)皮膚のトラブル

  • 発汗と入浴困難が重なると、あせも、とびひ(伝染性膿痂疹)、白癬、疥癬などの皮膚感染症が起こりやすい。
  • 入浴できない場合も清拭を行い、下着・衣類をこまめに交換する。

(4)水回り・衛生害虫

  • 仮設シャワーや散水で生じる細かい水しぶき(エアロゾル)は、レジオネラ肺炎の原因となることがある。しばらく使用していなかった設備は、水を流してから使用する。
  • 生ごみは密閉して早めに廃棄し、ハエ・ゴキブリ・ネズミの発生を防ぐ。

X. ワクチン接種・予防のポイント

避難生活では、集団生活による感染症の拡大と、がれき撤去・清掃作業に伴う外傷の双方がリスクとなります。ワクチンで防げる疾患については、避難者・支援者の接種歴を早期に確認し、必要な接種機会を確保することが重要です。母子健康手帳やお薬手帳を失った方も多いため、記録が確認できない場合の対応も含めて整理しました。

1.避難所で確認したいワクチン

(1)インフルエンザ・COVID-19

  • 流行期には避難所内で急速に拡大する。高齢者・基礎疾患保有者・妊婦などの高リスク者を優先し、接種機会の確保について自治体・保健所と調整する。
  • 職員・支援者・ボランティアの接種も、外部からの持ち込みと拡大の防止に有効である。

(2)肺炎球菌

  • 高齢者・基礎疾患保有者は接種歴を確認する。避難所では誤嚥性肺炎やインフルエンザ後の二次性肺炎のリスクも高まる。
  • 2026年4月から、高齢者の定期接種に用いるワクチンは20価結合型ワクチン(PCV20)に変更された(対象は65歳、および60~64歳で日常生活が極度に制限される程度の基礎疾患を有する者。1回筋肉内接種)。任意接種としてPCV21等の選択も検討する。

(3)麻疹・風疹(MR)、水痘、流行性耳下腺炎

  • 麻疹・水痘は感染力が極めて強く、避難所内での感染制御は困難。発生時は接種歴・罹患歴の確認を最優先で行う。
  • 未接種・未罹患の者への曝露後72時間以内のワクチン接種は、発症予防効果が期待できる。
  • 麻疹の疑い例は、確定を待たずに直ちに保健所へ連絡し、隔離と接触者の把握を進める。

(4)小児の定期接種が中断した場合

  • 災害で定期接種が中断しても、接種間隔が空いたことを理由に最初からやり直す必要はない。可能になった時点で残りの回数を接種する。
  • 五種混合(DPT-IPV-Hib)、B型肝炎、ロタウイルス、小児用肺炎球菌など、乳幼児の接種が滞らないよう自治体・かかりつけ医と調整する。

2.破傷風トキソイドワクチン(外傷患者への対応を含む)

破傷風は、発症すると致命率が高い一方で、ワクチンによりほぼ確実に予防できる疾患です。災害後は外傷の機会が急増するため、避難所・救護所で最も重要なワクチンの一つとなります。

(1)災害時に破傷風が問題となる理由

  • 土壌からの感染:破傷風菌の芽胞は土壌に広く分布し、がれき撤去、清掃、浸水家屋の片付け、農作業などで受傷すると創部から侵入する。
  • 小さな傷でも発症:深い刺し傷、泥や錆が入った傷、挫滅創、熱傷、動物咬傷は特にリスクが高い。一方で小さな擦り傷でも発症しうる。
  • 受傷歴が不明な例:明らかな外傷が確認できないまま発症する例もあり、「傷がないから大丈夫」とは言えない。

(2)日本人の免疫状況

  • 1968年が分岐点:日本では1968年(昭和43年)に破傷風を含むワクチンが定期接種化された。それ以前に生まれた世代は基礎免疫を持たない人が多く、受傷時には特に注意を要する。
  • 免疫は約10年で減衰:破傷風抗毒素の抗体価は最終接種から約10年で発症防御レベルを下回る。定期接種を受けた世代でも、成人期の追加接種はほとんど行われていないのが実情である。

(3)定期接種のスケジュール

  • 小児:五種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)を生後2か月から初回3回+追加1回、11~12歳で二種混合ワクチン(DT)を1回接種する。
  • 成人:基礎免疫のある人は、10年ごとの追加接種(任意接種)が推奨される。
  • 外傷後の破傷風予防を目的として使用した場合は、保険給付の対象となる。

(4)外傷患者への対応(受傷後の予防)

創部の十分な洗浄とデブリードマンを行ったうえで、接種歴と創の状態に応じて破傷風トキソイドワクチンワクチンおよび抗破傷風ヒト免疫グロブリン(TIG)の投与を判断する。接種歴が確認できない場合は「基礎免疫なし」として扱う。

破傷風の接種歴 清潔な小さい創 汚染創・挫滅創・熱傷・咬傷など
基礎免疫3回以上あり
最終接種から10年未満
トキソイドワクチン:不要
TIG:不要
トキソイドワクチン:原則不要(最終接種から5年以上経過していれば1回追加)
TIG:不要
基礎免疫3回以上あり
最終接種から10年以上
トキソイドワクチン:1回追加
TIG:不要
トキソイドワクチン:1回追加
TIG:不要
基礎免疫なし・不明・3回未満
(1968年以前に生まれた人を含む)
トキソイドワクチン:接種し、計3回の基礎免疫を完了させる
TIG:原則不要
トキソイドワクチン:接種し、計3回の基礎免疫を完了させる
TIG:250単位を別部位に筋注で併用
免疫不全のある患者 上記に準じる 接種歴にかかわらずTIGの併用を考慮する

(5)基礎免疫がない・不明な場合の3回接種

  • 1回目(受傷時)、2回目(3~8週後)、3回目(12~18か月)が目安。
  • 3回の接種でおよそ10年間の免疫が得られる。避難所を離れた後も接種を完了できるよう、接種日と次回接種の予定を記載した用紙を本人に渡す。

(6)実務上の留意点

  • TIGは受傷後できるだけ早く投与する。効果は一時的であり、基礎免疫の代わりにはならないため、トキソイドワクチンの接種も併せて開始する。同時に投与する場合は別の部位に接種する。
  • 抗菌薬による破傷風の発症予防効果は期待できないため、受傷後の予防的投与は推奨されない。
  • 破傷風トキソイドワクチン製剤は供給が不足している場合は、必要に応じて破傷風トキソイドワクチンを含む他のワクチン(DT等)での代替を検討する。
  • 不活化ワクチンであり、妊婦への接種も可能である。

3.支援者・ボランティアの事前準備

  • 派遣前に、破傷風(最終接種から10年以上経過していれば1回追加)、インフルエンザ、COVID-19、麻疹・風疹、水痘、B型肝炎の接種歴を確認する。
  • 医療関係者や災害医療に従事する可能性の高い者は、破傷風を含む基礎免疫を完了しておくことが望ましい。

XI. 作成にあたって・参考文献

本資料は、以下の原資料・参考文献をもとに、感染症を専門としない現場の支援者にも活用しやすいよう再構成したものです。

上記のうちURLを付した資料は2026年7月31日に参照したものです。URLを記載していない資料については、各機関の公式サイトで最新版をご確認ください。
災害医療・公衆衛生の状況は刻々と変化します。実際の対応にあたっては、最新の自治体・保健所・厚生労働省等からの情報とあわせてご活用ください。

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