1.ジカウイルス感染症について
ジカウイルス感染症は、フラビウイルス科フラビウイルス属のジカウイルスによる蚊媒介感染症です。ジカウイルス感染症の急性期の症状(斑状丘疹や発熱など)はデング熱より軽いとされています。
ジカウイルス感染症の流行地域は2015年以降に中央および南アメリカ大陸、カリブ海地域において急速に拡大し、さらにアジア・西太平洋地域、インド洋地域においても症例が報告されています。また、2015年以降の南北アメリカ大陸における流行において、妊婦のジカウイルス感染と胎児の小頭症との関連が注目されています。胎児が小頭症と確認された妊婦の羊水からジカウイルス遺伝子が検出され、また出産後まもなく死亡した小頭症の胎児の脳組織からジカウイルス遺伝子が検出されました(Schuler-Faccini L, et al. MMWR 65(3);59-62,2016)。このような事態を踏まえて、WHOは、2016年2月1日に緊急委員会を開催し、小頭症及びその他の神経障害の集団発生に関して「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態(PHEIC)」を宣言しました。
その後、ジカウイルスと小頭症を含む先天異常との関連性については、小頭症による死亡胎児・新生児の脳脊髄液・脳組織等からジカウイルスRNAや抗原が検出されているほか、動物モデルにおいてもジカウイルス感染が小頭症を含む先天異常を来すことにより確認されています。また疫学研究においても極めて強い関連性が示唆されたことから、両者の因果関係は科学的な合意が得られています。その後も3回の緊急委員会の推奨を受けてPHEICは継続されましたが、2016年11月18日に第5回会合が開催され、ジカウイルス感染症とその合併症は、もはやPHEICには該当しないとされています。
わが国において、2016年2月15日から本疾患は4類感染症に位置づけられ、医師の届け出が求められております。また、2016年2月以降2017年3月13日までに13例の輸入感染例の届出がされています。
2.ジカウイルス感染症の協力医療機関について
前述の状況から、海外渡航歴等からジカウイルス感染症を疑う妊婦については、ジカウイルス感染症の検査の必要性について専門的な助言が行える体制の確保が必要となっております(ジカウイルス感染症リスクアセスメント参照)。
日本感染症学会は2014年に発生したデング熱の国内流行を受けて、2015年に蚊媒介感染症専門医療機関ネットワークを構築しました。今回、この蚊媒介感染症専門医療機関ネットワークのうち、2016年9月20日時点で産科婦人科あるいは周産期センターを併設する110の医療機関に「ジカウイルス感染症協力医療機関」としてご協力いただけることになりました。
また、今後、医療機関において「ジカウイルス感染症を疑う妊婦」が発生した場合に、妊婦に対して問診や診察などを行い、必要に応じて妊婦の経過観察を行っていただく医療機関として、以下の12施設にご協力いただけることになっています。
【産婦人科】
東京大学医学部附属病院女性診療科・産科
富山大学附属病院産婦人科
浜松医科大学医学部附属病院産婦人科
神戸大学医学部附属病院産科婦人科
宮崎大学医学部附属病院産婦人科
長崎大学病院産婦人科
三重大学病院産科婦人科
日本大学医学部附属板橋病院産婦人科
【小児科】
東京大学医学部附属病院小児科
長崎大学病院小児科
藤田医科大学病院
神戸大学附属病院小児科
3.ジカウイルス感染症の診療体制について
国内の医療機関の先生方、とりわけジカウイルス感染症協力医療機関及び母子感染ネットワーク医療機関等の先生方に対して、国内における妊婦を含むジカウイルス感染症の診療の流れについては、国立感染症研究所、AMED成育疾患克服等総合研究事業「母子感染に対する母子保健体制構築と医療開発技術のための研究(ジカウイルス班)」から公表されています(http://www.nih.go.jp/niid/images/epi/zika/zika-mcs20170324.pdf)。
4.医師を対象としたQ&A
国内のジカウイルス感染症の診療に携わる医師を支援する目的で、医師を対象としたQ&A(2017年3月24日更新)が国立感染症研究所、国立国際医療研究センター、AMED成育疾患克服等総合研究事業「母子感染に対する母子保健体制構築と医療開発技術のための研究(ジカウイルス班)」から公表されています(http://www.nih.go.jp/niid/images/epi/zika/zika-qa20170313.pdf)。
ジカウイルス感染症協力医療機関
参考資料:蚊媒介感染症の診療ガイドライン(第4版)