日本感染症学会症状からアプローチするインバウンド感染症への対応|感染症クイック・リファレンス

最終更新日:2025年4月13日

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ウイルス性出血熱(viral hemorrhagic fever)

病原体、感染経路、流行地域、予後

エボラ出血熱 マールブルグ病 クリミア・コンゴ出血熱 ラッサ熱 南米出血熱
病原微生物 フィロウイルス科エボラウイルス属 フィロウイルス科マールブルグウイルス ブニヤウイルス科ナイロウイルス属CCHFウイルス アレナウイルス科ラッサウイルス フニンウイルス(アルゼンチン出血熱)、マチュポウイルス(ボリビア出血熱)、グアナリトウイルス(ベネズエラ出血熱)、サビアウイルス(ブラジル出血熱)
宿主 コウモリ? オオコウモリ マダニ、哺乳類(家畜など) マストミス げっ歯類
感染経路 コウモリや霊長類?からヒト
ヒトからヒト
オオコウモリや霊長類からヒト
ヒトからヒト
マダニや家畜からヒト
ヒトからヒト
マストミスからヒト
ヒトからヒト
げっ歯類からヒト
ヒトからヒト
潜伏期 2~21日 3~16日 3~12日 5~16日 7~14日
流行地域 ウガンダ、コンゴ民主共和国、西アフリカなど サハラ以南アフリカ アフリカ、中東、バルカン半島、ロシア南部、中国西部 西アフリカ 南米
致死率 25~90% 25~90% 5~30% ~15% 15~30%

発生頻度

散発的にアウトブレイクを起こしている。ラッサ熱は、ナイジェリアにおいて疑い例も含めて毎年1,000名を越えるラッサ熱患者が報告されている。エボラ出血熱は、2014年に西アフリカ(リベリア、シエラレオネ、ギニア)に感染者3万人を超える大規模な流行があり、コンゴ民主共和国では断続的に流行を繰り返している。2024年にはルワンダでマールブルグ病の発生が報告されている。

主要症状・検査所見

発熱に加えて頭痛、関節痛などの非特異的症状を呈する。マラリアなどの熱帯病と比べて消化器症状の頻度が高いのが特徴であり、出血症状を呈するのは全体のおよそ20%程度である。

感染対策

体液暴露を防ぐために厳密な対策が必要である。具体的には、二重手袋、二重ガウン、ゴーグル、フェイスシールド、N95マスク、シューズカバーを装着する個人防護具での診療が推奨される。

法制度、疑った場合の対応

感染症法で一類感染症に指定されており、ウイルス性出血熱が疑われた場合直ちに最寄りの保健所に連絡する。擬似症に該当する患者は特定または第一種感染症指定医療機関に搬送される。

診断

それぞれ、血清を用いたPCR法での診断が原則である。検査は行政検査として国立感染症研究所で行われる。

治療(応急対応)

治療は対症療法が中心となり、重症度によっては集中治療を要する。エボラ出血熱に対するモノクローナル抗体、ラッサ熱に対するリバビリンなど一部有効性が証明されている薬剤が存在する(エボラ出血熱の治療薬は国内未承認)。

専門施設に送るべき判断

ウイルス性出血熱を疑った場合、最寄りの保健所に連絡する。

専門施設、相談先

国立国際医療研究センター 国際感染症センター

役立つサイト、資料

  1. World Health Organization. Ebola situation reports: Democratic Republic of the Congo.
    https://www.who.int/emergencies/situations/ebola-health-update---%C3%A9quateur-province-democratic-republic-of-the-congo-2020
  2. 国立感染症研究所.ウイルス性出血熱.
    https://id-info.jihs.go.jp/diseases/a/hemorrhagic-fever/index.html

(利益相反自己申告:
講演料:ファイザー株式会社、塩野義製薬株式会社、ギリアド・サイエンシズ株式会社、MSD株式会社、グラクソ・スミスクライン株式会社
研究費・助成金など:塩野義製薬株式会社、栄研化学株式会社
寄附講座:アース製薬株式会社、塩野義製薬株式会社)

大阪大学大学院医学系研究科・医学部感染制御学講座 忽那 賢志

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