日本感染症学会症状からアプローチするインバウンド感染症への対応~東京2020大会にむけて~|感染症クイック・リファレンス

最終更新日:2019年7月23日

30
侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease)

病原体

肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae

感染経路

主に飛沫感染である。1歳児の30-50%が肺炎球菌を鼻腔に保菌しており、保育施設に入園後1-2か月で保菌率は80%以上に上昇する。成人の保菌率は3-5%程度と低い。

流行地域

世界中で発生がある。約90種類の莢膜多糖体抗原に対する血清型があり、国や地域によって、流行血清型が異なる。

発生頻度

2017年度の侵襲性肺炎球菌感染症は人口10万人あたり、2.4人。5歳未満小児では9.3人であった。

主要症状・検査所見

肺炎、気管支炎、中耳炎、副鼻腔炎などの気道感染症に加え、菌血症や髄膜炎などの侵襲性感染症も引き起こす。まれに関節炎、蜂窩織炎、腹膜炎を起こすことがある。細菌特異的な症状はなく、各疾患の一般的な症状を呈する。

予後

ワクチン導入前の日本での肺炎球菌髄膜炎は約6-7%が死亡し、約30%が脳障害や聴力障害などの後遺症を残していた。

感染対策

標準予防策に加えて、症状に応じて接触予防策・飛沫予防策を行う。

法制度

侵襲性肺炎球菌感染症は感染症法上の5類全数疾患(確定患者、死亡者を診断した医師は7日以内に届け出る)、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症は5類定点疾患である。

診断

細菌培養検査にて同定、診断を行う。成人の場合は尿中肺炎球菌抗原検査も有用だが、小児の場合は保菌による偽陽性があるため推奨されない(髄膜炎を疑う場合に髄液での肺炎球菌抗原検査は有用である)。

治療(応急対応)

髄膜炎を除き、ペニシリン系抗菌薬が基本となる。髄膜炎や菌血症などの侵襲性肺炎球菌感染症を疑う場合はペニシリン耐性株も考慮した抗菌薬(バンコマイシン+セフトリアキソンなど)で治療を開始する。無脾症患者などの肺炎球菌ハイリスク者に対しては、発熱を呈する時点で上記と同様にempiricに治療を開始する。

予防

我が国では5歳未満の小児に対して、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)が定期接種され(標準的には生後2か月、3か月、4か月、1歳の計4回)、65歳以降の高齢者に対して、23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン(PPSV23)が定期接種されている。PPSV23に関しては、2歳以上の無脾症等脾臓関連疾患の患者に対しては、健康保険給付が適応される。

専門施設に送るべき判断

治療に難渋した際には、紹介する。

専門施設、相談先

感染症指定医療機関など。

役立つサイト、資料:

  1. CDC. CDC Pneumococcal disease website with information for parents, public, and healthcare professionals. https://www.cdc.gov/pneumococcal/index.html
  2. 国立感染症研究所. 【特集】肺炎球菌感染症 2017, IASR 39(7), 2018_

(利益相反自己申告:申告すべきものなし)

千葉大学大学院医学研究院小児病態学 竹下健一

Share on Facebook Twitter LINE
このページの先頭へ