日本感染症学会症状からアプローチするインバウンド感染症への対応|感染症クイック・リファレンス

最終更新日:2025年4月13日

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

病原体

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)

感染経路

飛沫感染が主であり、一部接触感染でも感染する。

流行地域・発生頻度

調査方法の変更などの影響はあるが、2024年10月16日時点でWHOダッシュボードによると世界中で述べ7億8000万人が感染し、700万人以上が死亡したとされる。人口が多く、感染症のサーベイランス体制が整った国で累積症例数は多いが、世界的に拡散している。全数把握を止めた国も多く、一見、大きな流行が無くなったようにも見えるが、定期的な流行を認めている。

潜伏期間・主要症状・検査所見

潜伏期間は1~7日(中央値2~3日)である。
発熱・鼻汁・咽頭痛・咳嗽といった非特異的な上気道炎の症状を呈し、下痢や嘔吐などの消化器症状、嗅覚・味覚異常を訴えることもある。酸素投与を要さない軽症例は一般的に1週以内に症状が改善する。
流行初期は発症から7日目前後で肺炎が悪化し酸素投与が必要となる経過が一般的であったが、オミクロン株の流行以降は発症から重症化までは中央値で3日、死亡までは7日と重症化までの臨床経過が短くなっている。典型的な肺炎像は、両側末梢性の浸潤影・すりガラス影が特徴的である。
急性期を過ぎても、倦怠感、呼吸困難感、集中力低下、筋力低下などの罹患後症状が、診断3か月以上持続することも多い。

予後

2024年4月時点で全世界での致命率は0.9%とされている。基礎疾患を持つ患者や高齢者において致命率は高くなり、50歳を超えたところから1%を超え、80歳以上では10%を超える報告が多い。

感染対策

標準予防策に加えて、飛沫予防策、接触予防策を行う。結膜を介した感染も懸念されることからアイシールドも使用が推奨される。エアロゾル発生手技(喀痰吸引や気管挿管など)では空気予防策も考慮される。

法制度

2020年2月1日から指定感染症、2021年2月13日から新型インフルエンザ等感染症、2023年5月8日からは五類感染症となり、全数報告から定点報告へと変更された。

診断

診断は抗原検査やPCRなどの核酸増幅検査によってなされる。
鼻咽頭拭い液、鼻腔拭い液、唾液が検体として用いられる。

診断した(疑った)場合の対応

COVID-19定点医療機関では患者数を把握し、保健所に報告する。

治療(応急対応)

発症後しばらくの間はウイルスが増殖しており、抗ウイルス薬が有効である。重症化し、酸素需要がでてきた場合には過剰な炎症反応を抑制することが有効とされる。病期を適切に捉えた上で、抗ウイルス薬や抗炎症薬を用いて治療を行う。
2024年10月時点で国内承認されている抗ウイルス薬にはレムデシビル、ニルマトレルビル/リトナビル、モルヌピラビル、エンシトレルビルがある。前3者では重症化阻止効果が示されている。抗炎症薬としては、デキサメタゾン、バリシチニブ、トシリズマブが用いられる。
モノクローナル抗体を用いた中和抗体製剤も有効であったが、ウイルスの度重なる変異により、2024年10月時点では有効な中和能を示す国内承認製剤はないと考えてよい。

予防

2024年10月現在、5種のワクチン(mRNAワクチン3種、レプリコンmRNAワクチン1種、組換えタンパクワクチン1種)が国内で流通しており、65歳以上あるいは60歳以上の重症化リスクの高い者は、定期接種として所属自治体から接種費用の助成を受けての接種が可能である。それ以外では任意接種となる。

専門施設に送るべき判断

繰り返す再燃例や重症例への対応が困難な場合など。

専門施設、相談先

高度医療を提供可能な機関や感染症指定医療機関に相談する。

役立つサイト、資料

(利益相反自己申告:
研究費・助成金など:富士レビオ株式会社、キャノンメディカルシステムズ株式会社、三洋化成工業株式会社、カーブジェン株式会社、株式会社シスメックス、東洋紡株式会社)

国立国際医療研究センター国際感染症センター 山元  佳

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