日本感染症学会症状からアプローチするインバウンド感染症への対応~東京2020大会にむけて~|感染症クイック・リファレンス

最終更新日:2019年7月23日

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黄熱(Yellow fever)

病原体

原因ウイルスはフラビウイルス科フラビウイルス属の黄熱ウイルス(Yellow fever virus,YFV)。

感染経路

YFVは、都市部ではヒトとヤブ蚊の間(都市型黄熱)、森林部ではサルとヤブ蚊の間(森林型黄熱)で維持されている。ヒトはYFVを有する蚊(ネッタイシマカ等のヤブカ)に咬まれて感染する。

流行地域

北緯15度と南緯15度に挟まれたアフリカおよび中南米の熱帯・亜熱帯地域で流行している。ただし、アジアでは流行していない。

発生頻度

WHOの報告によると周期的に患者数の増減が認められる。過去20年間毎年概ね3,000人以下の患者が報告されている。2015年12月から2016年6月にかけて、アンゴラとコンゴ民主共和国で黄熱の大規模流行が発生した。アンゴラとコンゴ民主共和国でそれぞれ疑い患者を含めて約4,347人と約2,987人(死者数はそれぞれ377人と121人)の患者が発生した1)

潜伏期間・主要症状・検査所見

潜伏期間は通常3-6日とされている。発症初期には、発熱、頭痛、紅潮、結膜充血、筋肉痛等の急性感染症状が出現する。末梢血液検査では、白血球減少や血小板減少が認められることが多い。理学所見は、圧痛を伴う肝肥大、上腹部圧痛、苺様舌、比較的徐脈が認められることがある。重症化すると黄疸、疲労感、嘔吐、上腹部痛、乏尿症、肝障害、腎不全、出血、心筋障害、中枢神経障害が出現する。

予後

発症者の約15%が重症化すると考えられており、発症すれば致命率は20%と高い。重症黄熱患者の予後は不良である。

感染対策

ヒトからヒトに感染することはないので、患者の診療時は標準予防策で対応する。流行地に赴く場合には黄熱ワクチン接種を受けることが必要である。黄熱流行国に入国・出国するには、黄熱ワクチン接種を証明するイエローカードの携帯が求められている。流行地では蚊に刺されないようにする。

法制度

黄熱は感染症法において4類感染症に指定されている。黄熱と診断された患者、疑似症患者、無症状病原体保有者、死亡者を診た場合には、直ちに最寄りの保健所に届け出る。

診断

診断にはウイルス学的な検査が欠かせない。流行地への渡航歴の有無、黄熱ワクチン接種歴を確認する。通常、YFVに対するIgM抗体検出、急性期および回復期におけるYFVに対するIgG抗体価の有意な上昇を確認する血清学的検査と血液等からYFV遺伝子を検出する検査が実施される。

診断した(疑った)場合の対応

最寄りの保健所や渡航外来のある医療機関、国立感染症研究所に相談するとよい。

治療(救急対応)

特異的な治療法はない。

専門施設に送るべき判断

重症化した場合の予後は不良である。黄疸が出現したり、DIC等の出血傾向が認められたりしている場合には感染症専門医のいる医療機関に搬送し、治療を行うことが推奨される。

専門施設、相談先

国立感染症研究所や渡航者外来のある医療機関、感染症専門医のいる医療機関に相談する。

役立つサイト、資料

  1. WHO. Situation report. Yellow fever 28 October 2016. https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/250661/yellowfeversitrep28Oct16-eng.pdf;jsessionid=0D1F16821168CA5E61DD638A98F6EC21?sequence=1
  2. 厚生労働省検疫所の関連サイト:黄熱について
    https://www.forth.go.jp/useful/yellowfever.html

(利益相反自己申告:申告すべきものなし)

国立感染症研究所ウイルス一部 西條政幸

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