新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行してから、約2年が経過しようとしています。未だに完全終息とは言えませんが、社会は次第に元通りの活気をとりもどしつつあり、国際交流もほぼコロナ禍前にまで戻ってきました。
皆が期待を膨らませながら迎えようとしていた世界一のスポーツの祭典オリンピック・パラリンピック東京大会を2020年7月に控えていた矢先にコロナパンデミックに見舞われ、結局1年延期をしても、人的な国際交流がほぼ停止した中で、無観客での開催となりました。一方、本大会中の救急・災害医療を想定し当時各種医療関係団体が中心となりコンソーシアムを形成して備える中で、日本感染症学会では特に海外からの持ち込み感染症への対応を重要な責務と捉え、それをサポートするツールとして、「症状からアプローチするインバウンド感染症への対応~東京2020にむけて~」をWEB公開しました。今回は、これを基本骨格として、2025年に開催される大阪万博を想定して、新たな知見を追加し、内容を拡充して改訂を行いました。基本的に本企画では、患者を前にして、発熱、呼吸器症状、下痢、発疹、急性神経症状などの感染症を想起させる主要症状に応じて想定される疾患にリンクし鑑別診断および役に立つ関連情報に迅速に辿り着くよう工夫されています。また、COVID-19を経て改良、開発されたワクチンもあり、関連するワクチンや感染対策などについても示されています。感染症各論の項では9疾患を加え85の重要な疾患について概要をまとめ充実をはかりました。
本企画が海外からの持ち込み感染症などの診療にあたる皆様の一助になりますことを願っております。是非お役立てください。また、ご使用になられお気づきの点がございましたらどうぞご意見をいただけますと幸いです。最後になりますが、大変お忙しい中、本事業にご尽力いただいた中村ふくみ委員長、川名明彦前委員長、そして本クイック・リファレンス作成委員会の委員の皆様に感謝を表します。
2025年3月31日
一般社団法人日本感染症学会 理事長 長谷川直樹(慶應義塾大学)
東京オリンピック・パラリンピックは新型コロナウイルス感染症のため、残念ながら海外の一般のお客様をお迎えすることはかなわなくなりました。
”感染症クイック・リファレンス”はもともと世界各国からおいでになる方が海外、あるいは国内で罹られる感染症に関して情報をまとめたものです。こうした方の多くが一般の医療機関を受診されることを念頭に、第一線で患者診療にあたられる医療スタッフのよき手引きとなることを意図して編集されました。
「症状からアプローチするインバウンド感染症への対応」と名づけられたこのリファレンスは、新型コロナウイルス感染症を加えた小さな修正を行いましたが、今回東京2020大会の後も続く”海外からお客様を迎えて行う大規模イベント(マスギャザリング)”に対応できるリファレンスとしてリニューアルすることとなりました。現場でお使い頂く方のことを考え、症状から見た鑑別診断についてわかりやすくまとめています。また、感染症各論の項目では新型コロナウイルス感染症を加えた77の重要な疾患の概要がまとめられており、旅行医学のリファレンスとしてもお使い頂けるものだと思います。
本企画は、日本感染症学会員の中でもこの方面の経験が豊かな方に執筆して頂いていますが、日本感染症学会オリンピック・パラリンピックアドホック委員会の皆様、多くの関係団体の皆様、多くの会員の方々のサポートにより実現できたものです。
改訂作業にあたられた川名明彦委員長をはじめ本アドホック委員会の委員の先生方のご努力に心から御礼申し上げるとともに、本リファレンスが今後国際交流の場における医療の充実に役立つよう願っております。
2021年7月26日
一般社団法人日本感染症学会 理事長 四柳 宏(東京大学医科学研究所)
2020年7月24日に東京オリンピック・パラリンピックが始まります。世界中が注目するスポーツの祭典であり、その年には4,000万人以上の方が海外から訪れるのではないかと考えられています。我々医療関係の団体が中心となり、本大会中の救急・災害医療に関してコンソーシアムを形成して備えているところですが、特に海外からの持ち込み感染症への対応は、私たち日本感染症学会の大事な責任であると認識しております。そのような背景から、「症状からアプローチするインバウンド感染症への対応」を電子媒体および冊子体として準備することになりました。
本企画では、患者様を前にした状況の中で役立つ鑑別診断および関連情報を迅速かつ分かりやすく参照していただけるように工夫しております。発熱、呼吸器症状、下痢、発疹、急性神経症状などの主要症状から考えておかなければいけない疾患に直接リンクする形で繋がっています。外来診療の中で、ベットサイド診察中に症状別のクイックリファレンスが可能なように情報が整理されています。また、国際的マスギャザリングに関連したワクチン、インバウンド感染症の感染対策なども分かりやすく示されています。感染症各論の項目では77の重要な疾患の概要がまとめられており、海外からの持ち込み感染症として忘れてはいけない疾患が参照できるように構成されていることが特徴です。
本企画は、日本感染症学会オリンピック・パラリンピックアドホック委員会の皆様のご尽力のもと、多くの関係団体と会員の方々のサポートにより実現できたものです。「症状からアプローチするインバウンド感染症への対応」が臨床現場で診療にあたる全ての皆様のお役に立つことを願っております。最後になりますが、大変お忙しい中で本事業にご尽力いただいた川名明彦委員長、そして本アドホック委員会の委員の先生方にお礼を申し上げ、皆様方と一緒に2020年東京オリンピック・パラリンピックの成功を祈念したいと思います。
2019年7月
一般社団法人日本感染症学会 理事長 舘田一博(東邦大学)