日本感染症学会症状からアプローチするインバウンド感染症への対応~東京2020大会にむけて~|感染症クイック・リファレンス

最終更新日:2019年7月23日

56
パルボウイルスB19感染症(Human parvovirus B19 infection)

病原体

パルボウイルスB19

感染経路

飛沫感染である。

流行地域

世界中でみられる。

発生頻度

一般的なウイルス性疾患であり、明確な発生頻度は不明である。日本では1月から7月上旬にかけて増加して9月頃が最も少ない季節性を示すが、流行が小さい年の季節性は乏しい。年齢とともに罹患率は上昇し、概ね学童期に発症することが多い。

潜伏期間・主要症状・検査所見

潜伏期間は10-20日間であり、頬に境界鮮明な紅斑が出現し、続いて手足に網目状、レース状の発疹が見られる。不顕性感染は全症例の4分の1程度でみられる。成人では関節痛や四肢の浮腫、頭痛の症状が前面に出で、関節炎から歩行困難になることがある。頬に紅斑が出現する7-10日前に、微熱や感冒症状がみられることが多いが、この時期にウイルス血症を起こしているため感染力を有する。特徴的な発疹が出現して、臨床的に診断される時期はすでにウイルス血症はなく、周囲への感染性はほとんどない。

予後

通常は合併症もなく自然軽快する。一度感染すると、終生免疫が得られるため一般的に再感染はしない。妊婦が感染すると、約20%に経胎盤感染で、胎内感染から胎児水腫をきたすことがある。胎内感染した場合、約10%が流産あるいは死産となる。パルボウイルスB19は赤血球に感染するため、もともと遺伝性球状赤血球症やサラセミアなどの溶血性疾患を持つ人では重症の貧血発作になることがある。またステロイド内服中など、免疫抑制者ではウイルスが排除されず、ウイルス血症が持続して慢性の骨髄機能不全や貧血になることがある。

感染対策

ウイルス血症の時期は標準予防策に加えて、飛沫予防策が必要であり、マスクを着用する。

法制度

「伝染性紅斑」は定点報告対象(5類感染症)であり、指定届出機関(全国約3,000カ所の小児科定点医療機関)は週毎に保健所に届け出る。

診断

自然軽快する予後良好なウイルス感染症であるため、原則として臨床症状から診断する。妊婦や重症化しやすい人では、血液検査でパルボウイルスB19のIgM抗体を測定して診断することもある。ただし保険適用は妊婦のみである。

診断した(疑った)場合の対応

特徴的な発疹によって臨床診断されることが多く、この時期にはすでにウイルス血症は消失しており感染力がないため、標準予防策で対応する。感染力を有するウイルス血症の時期に患者と接触するときは、飛沫感染によりヒトからヒトに伝播するため、飛沫予防策を実施する。

治療

パルボウイルスB19に対する抗ウイルス薬による特異的治療や予防のワクチンはない。自然軽快するため対症療法が中心である。

役立つサイト、資料

  1. CDC Parvovirus and Fifth Disease https://www.cdc.gov/parvovirusb19/fifth-disease.html
  2. 国立感染症研究所 伝染性紅斑とは https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/443-5th-disease.html
  3. 国立感染症研究所 ヒトパルボウイルスB19母子感染の実態https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2340-related-articles/related-articles-431/6180-dj4314.html
  4. Heegaard ED, et al. Human parvovirus B19. Clin Microbiol Rev 2002; 15: 485-505
  5. Servey JT, et al. Clinical presentations of parvovirus B19 infection. Am Fam Physician 2007; 75: 373-6

(利益相反自己申告:申告すべきものなし)

藤沢市民病院 清水博之

Share on Facebook Twitter LINE
このページの先頭へ