日本感染症学会症状からアプローチするインバウンド感染症への対応~東京2020大会にむけて~|感染症クイック・リファレンス

最終更新日:2019年7月23日

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ジアルジア症(Giardiasis)

病原体

ランブル鞭毛虫、Giardia intestinalis (syn. G. lamblia, G. duodenalis

感染経路

糞便中に排出された嚢子を経口摂取することで感染する。氷や生野菜などを介した食品媒介感染のほか、汚染された水道による水系感染や、性的接触による感染もある。嚢子は湿った状態で抵抗力が強く、通常の塩素消毒では死滅しない。60℃・数分以上の加熱で死滅するが、流行地では生水や生野菜などに注意する必要がある。

流行地域

世界中に広く分布するが、衛生状態の悪い地域に多い。南アジア、東南アジア、北アフリカ、カリブ海、南アメリカなどの低所得国への渡航が感染のリスクファクターとされる。

発生頻度

低所得国では10歳以下の小児のほぼ全員が感染しているとの報告もある。日本国内では年間70件前後が報告されている。輸入感染症のなかで渡航者下痢症の一疾患として重要だが、国内感染例もある。

潜伏期間・主要症状・検査所見

症候性のジアルジア症の場合、潜伏期間は嚢子の経口摂取から1-3週間である。主な症状は下痢で、軟便から激しい水様下痢まで様々あり、しばしば脂肪性下痢をきたす。腹痛、鼓脹、硫化水素臭の強い放屁、悪心、嘔吐なども生じる。腸上皮細胞への侵襲性はなく、発熱や血便は通常認められない。少数寄生の場合はほとんどが無症状で、糞便中に持続的に嚢子を排出しつづける無症候性嚢子保有者となることがある。

予後

下痢は1-2週間程度で自然治癒するが、一部は慢性感染に移行する。慢性感染では、腸管上皮微絨毛の平坦化による吸収不良をきたし、脂肪便、乳糖不耐症、体重減少の原因となる。低γグロブリン血症や分泌型IgA欠損症患者の重症化が報告されている。

感染対策

糞口感染に注意し、標準予防策を徹底する。下痢で周囲を汚染する可能性のある患者では、接触予防策を検討する。

法制度

感染症法の5類全数把握届出疾患に指定されている。確定患者、死亡者を診断した医師は7日以内に最寄りの保健所へ届け出なければならない。

診断

顕微鏡検査によりランブル鞭毛虫の栄養型または嚢子を検出すれば、確定診断となる。栄養型は、下痢便、十二指腸液、胆汁の直接塗抹法により、活発に運動する様子を検出可能である。一方、嚢子は有形便中にみられ、直接塗抹法やMGL(ホルマリン・エーテル)法などの集嚢子法により検出される。便検体を用いた、蛍光抗体法による嚢子の検出キットやELISA法によるジアルジア抗原の検出キットなどもあるが、保険適応となっているものはない。

診断した(疑った)場合の対応

渡航歴や臨床徴候から本症が疑われる場合は、便虫卵検査を行う。本症と確定診断した場合は、最寄りの保健所へ届出を行い、メトロニダゾール内服などの治療を検討する。

治療(応急対応)

メトロニダゾールが唯一保険適用のある治療薬である。代替薬として、チニダゾール、アルベンダゾール、パロモマイシンなどがあるが、いずれも保険適用外である。

専門施設に送るべき判断

低γグロブリン血症や分泌型IgA欠損症患者などの免疫不全のため難治性となる場合には、専門施設への相談を検討する。

専門施設、相談先

日本寄生虫学会では寄生虫病に関する診断・治療のコンサルテーションを受け付けている(医療従事者限定、http://jsp.tm.nagasaki-u.ac.jp/academic/consultation/)。

役立つサイト、資料

  1. Minetti C, et al, Giardiasis, BMJ, 2016; 27: 355.
  2. 熱帯病治療薬研究班, 寄生虫症薬物治療の手引き2019
  3. 国立感染症研究所, ジアルジア症とは.IDWR 2004年第49号.

(利益相反自己申告:申告すべきものなし)

東京都立墨東病院 感染症科 鷲野巧弥

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