日本感染症学会症状からアプローチするインバウンド感染症への対応|感染症クイック・リファレンス

最終更新日:2025年4月13日

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ヒストプラスマ症(Histoplasmosis)

病原体

ヒストプラスマ属〔(広義の)Histoplasma capsulatum

感染経路

環境中(コウモリやトリの糞で汚染された土壌や塵埃など)に存在するヒストプラスマ属分生子を吸入することによる経気道感染が主体である。リスクを高める活動には、洞窟探検、鶏小屋の掃除、建設、造園などがある。

流行地域

米国中央部のミシシッピー渓谷からオハイオ渓谷を中心に毎年50万人余りが感染する米国最大の真菌性風土病である。そのほか、中南米、東南アジア、中国、アフリカ、オーストラリア、ヨーロッパの一部の国など広く発生がみられ、集団感染も起こる。

発生頻度

国内診断例は2024年末までに100例前後と少なく、主として輸入真菌症である。米国では毎年50万人余りが感染する一般的な感染症である。

潜伏期間・主要症状・検査所見

1-4週間の潜伏期間後に感冒様症状で発症(急性肺ヒストプラスマ症)するが、既存の肺疾患を有する患者や免疫不全患者においては、慢性肺ヒストプラスマ症や最重症型である播種性ヒストプラスマ症などのより重篤な症状を呈することもある。

予後

免疫正常で曝露量が少ない場合は1か月以内に自然軽快するが、大量曝露やCOPD等合併の場合は急性呼吸不全となる場合がある。HIV感染者など免疫不全患者では重症化することもある。

感染対策

ヒト-ヒト感染はしないので、患者の診療は標準予防策で対応してよい。しかし、患者由来の真菌はBSL3対応が必要なので検査前に専門施設に相談することが望ましい。

法制度

感染症法に規定されている真菌感染症ではない。

診断

診断において最も重要な点は海外渡航歴の確認であり、上述の流行地域への渡航歴を確認することが必要である。尿・血清の抗原検査や生検組織の病理組織学的検査、気管支肺胞洗浄液や肺生検検体などの培養・遺伝子検査も診断上必要となる。

診断した(疑った)場合の対応

流行地域への渡航歴あるいは集団感染が疑われる病歴があれば、専門機関へのコンサルトと検査依頼を行う。

治療(応急対応)

イトラコナゾール、リポソーマル・アムホテリシンBなどを症状・病型に応じて使用する。

専門施設に送るべき判断

流行地域への海外渡航歴を有する者における診断のつかない発熱持続と胸部異常陰影など。

専門施設、相談先

千葉大学真菌医学研究センター、国立感染症研究所真菌部。

役立つサイト、資料

  1. 亀井克彦.輸入真菌症と問題点.Med Mycol J 2012;53:103-8.
  2. CDC. Histoplasmosis.
    https://www.cdc.gov/histoplasmosis/index.html
  3. 希少深在性真菌症の診断・治療ガイドライン.一般社団法人 日本医真菌学会.2024年発刊.

(利益相反自己申告:申告すべきものなし)

国立感染症研究所 真菌部 宮﨑 義継

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